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COLUMN

2022.04.12信託

民事信託(家族信託)における信託受託者名義の銀行口座の必要性

  • 民事信託
  • 家族信託

執筆者:株式会社日税経営情報センター



1. 高齢者の銀行口座を巡る動き
認知症になると銀行口座(以下では銀行以外の信用金庫、信用組合、農業協同組合等の預貯金取扱い金融機関を包括して銀行と呼びます)が凍結される、という話はネット等でも良く目にします。
「凍結」とは、具体的には預金の解約や資金の引出しに制約がかかること、ということになります。これは、銀行が口座名義人であるお客さまの認知判断能力が著しく低下していることを認識している状態で取引をすることは、銀行にとってリスクがあるからです。

では、銀行に知られなければ良いのでしょうか。実態として、認知症になってしまって、認知判断能力が失われた方の銀行口座でも、ご家族がキャッシュカードや暗証番号、インターネットバンキングのIDとパスワードを知っていれば、例えば介護や医療にかかる費用の引出しや振込みをご本人口座から行うことができるかも知れません。しかし、本来的にはそのようなやり方はご本人との関係においても望ましいとは言えませんし、またご親族の中で余計なもめごとにも繋がりかねません。

ところで、2021年2月18日に一般社団法人全国銀行協会が高齢者やその代理人との取引に関する指針(注1)を発表しているのはご存知でしょうか。
この指針でも、基本的には認知判断能力に衰えが有る方については成年後見制度の利用が推奨されています。また、これはあくまでも指針であって全国の銀行が一律に同じ手続きで対応してくれるものでもありません。

ただし、その中でも、例えば任意後見契約とともに締結する委任契約に基づいて、任意後見監督人が選任される前であっても、つまり任意後見がスタートする前であっても、当該委任契約の受任者である任意後見人との取引が可能との記述があり、これは民事信託(家族信託)における受託者による財産管理にも通ずるものがあると思われます。

以下、本日は民事信託(家族信託)における信託財産管理の第一ステップとも言える信託受託者名義の銀行口座についてお話をさせていただければと思います。

2. 信託受託者口座は何故必要なのか-分別管理義務-
民事信託(家族信託)は、ご家族・ご親族である委託者と受託者の信託契約を締結したいという想いが合致すれば契約をすることはできます。でも、将来、認知症になることを懸念して金融資産や不動産を信託するにしても、その資産の管理には必ず、受託者名義での銀行口座が必要になります。介護・医療の費用の支払い口座や収益不動産の家賃の入金口座等として、受託者名義の銀行口座が必要になるのです。

この受託者名義の口座とはなんでしょうか。その口座の名義人が信託契約の受託者であることが明示されている口座ということになります。一般的には、「●●信託契約受託者〇〇」といった名義で作成される口座とお考えください。

ここで、受託者の個人口座ではだめなのか?という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。民事信託(家族信託)も信託法という法律に従って行う必要がありますが、その第34条に受託者の分別管理義務というものが規定されています。
受託者は信託財産を受託者の固有財産や他の信託財産と分別して管理しなければならないというもので、原則として、不動産のように登記ができる財産は登記によって、金銭のような財産は「その計算を明らかにする方法」によって分別管理することが求められています。従って、民事信託(家族信託)組成前から使用している受託者の個人口座を信託の管理口座にしてしまうことで、その口座に例えば信託財産である収益不動産の家賃等が入金されてきてしまうというのでは、この分別管理義務を満たしているとは言えません。

では、民事信託(家族信託)組成時に、新しく受託者の個人名義の口座を作成して、その口座で信託財産に関する金銭を管理するというのはどうでしょうか?これであれば、信託法で求められている「計算を明らかにする」ことは最低限満たされるのではないかとお考えの方もいらっしゃるかと思います。
しかしながら、それでは、例えば受託者に相続が発生した時にその口座内の金銭が受託者の相続財産として相続人によって払い戻しされてしまったり、あるいは、受託者個人の債権者によってその口座内の金銭が差し押さえられてしまうということが起きてしまう可能性があります。そういった事態を避ける意味でも、「●●信託契約受託者〇〇」のような名義の口座として開設し、その口座が信託の受託者の口座であり、その口座内の金銭が信託財産であることを外形的にも明らかにしておく必要があるのです。

では、実際に信託受託者名義の口座を開設する際には、銀行との間でどのようなやり取りが発生するのでしょうか?それはまた別の機会にご紹介させていただきたいと存じます。

私どもは相談段階では無料で対応させていただきますので、お気軽にご相談下さい!


注 釈

(注1) 2021年2月18日付「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方について」







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