相続税のかからない生前贈与
相続税対策のために、生前贈与を行い、相続財産を減らしていく、というのは大変オーソドックスな対策です。そのため、毎年贈与を行っている方も多いかと思います。暦年単位で110万円までの贈与であれば、贈与税はかからない、それをオーバーしても、200万円までは税率10%で済みます。310万円の贈与であれば、税金は20万円となり、実効税率は、6.5%です。財産の多い方は、このくらいまでの贈与であれば、相続税よりも税率は低くなります。もっと多くしても低くなる方もいるでしょう。
ただし、注意しなければならないことがあります。それは、相続が発生する以前3年内に行われた贈与は、贈与したにもかかわらず、計算上、相続財産に加算して、相続税を計算しなければなりません。亡くなる以前3年内に贈与した財産には、相続税がかかる、ということです。
もちろん、支払っている贈与税があれば、それは相続税から差し引くことができます。これは、亡くなる直前に、贈与をすることによって、不当に相続税を減らそう、ということを防止するための制度です。
したがって、高齢だったり病気でいつ亡くなるかわからない、という時には、毎年贈与しても相続税対策にならない、ということで、この対策はあきらめている方が多いのではないでしょうか。
ただし、この3年内贈与の加算は、相続で財産をもらった人に限って適用される制度なのです。
したがって、相続で財産をもらわない人には、この規定は適用されません。相続人である配偶者や子が、3年内に財産を贈与されていればその財産は、相続で取得した財産に加算されて、相続税が計算されます。しかし、
孫やひ孫、子の配偶者などに3年内に贈与していたとしても相続税がかかることはないのです。これは意外と知らない方が多いです。3年内の贈与はダメ、と知っていても、適用されない人もいる、だから高齢であっても、生前贈与対策は可能なのです。
相続人でない人への贈与、それも考慮して3年内の贈与を考えてみてはいかがでしょうか?
相続税の計算
相続税を計算する場合には、まず、課税の対象となる遺産額から基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を算出します。
税率をかける前に、この課税遺産総額を法定相続分で分け、法定相続人各人ごとの、取り分を計算します。その取り分に対して、それぞれ税率をかけて相続税を計算していきます。その合計を相続税の総額といいます。
法定相続人が1人しかいない場合は、課税遺産総額に対して税率をかけることになります。法定相続人が、2人3人となると、1人あたりの取り分が少なくなってきますから、累進税率である相続税の税率は下がってくることになります。相続財産額が同じでも、法定相続人が多い方が、相続税の総額が下がる、ということです。
相続税の総額が決まると、次にそれを各相続人に割り振っていくことになります。相続税の総額は、あくまで法定相続分で計算していました。
ただし、実際の相続では、法定相続分どおり分割するとは限りません。むしろ、法定相続分どおりでないことが多いでしょう。
そこで、実際の各相続人の相続税額は、各人の実際に取得した財産額により按分していきます。
法定相続分で相続税の総額を計算して、各人の実際の取得額でそれを按分する・・・これが日本の相続税計算のしかたです。さらにそこから税額控除(配偶者や未成年者や障害者など)や2割加算をする人は加算して、各人の相続税が計算されていきます。
○計算例1.課税遺産総額の計算2.法定相続分による取得金額3.相続税の総額(相続税の速算表をもとに計算)※各人の取得金額によって、税率が変わってきます。4.各人の相続税額(法定相続分を取得したとした場合)※実際には、7,400万円を実際に取得した財産額で按分していきます。5.上記で計算した各人の相続税額から、税額控除などをしていきます。 代表的なものは配偶者の税額軽減です。配偶者が、法定相続分まで取得した財産額、あるいは1億6千万円まで取得した財産額については、相続税がかからないことになっています。
上記は法定相続分を取得したものとしていますので、配偶者の相続税額3,700万円は、全額控除されて、ゼロとなります。最終的には、子2人の相続税額合計 3,700万円のみとなります。