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2021.12.07税務情報

インボイス(適格請求書)制度準備対応のポイント

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令和5年10月からのインボイス制度では、売手側に適格請求書(インボイス)の交付義務が課されること、買手側では適格請求書等の保存が必要になることが変更のポイントです。今回は、前号に続きインボイス制度について、売手側と買手側に区分して、準備対応のポイントを解説します。

■売手側の準備対応のポイント

●適格請求書発行事業者への登録手続

税務署へ「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出すると、審査後1月程度で登録通知が送付されます。インボイス制度の開始日から登録を受けるためには、令和5年3月31日までに申請する必要があります。登録自体は任意となる制度ですが、取引先が仕入税額控除を受けるため、登録すべきことになるでしょう。


●適格請求書発行事業者が課される4つの義務への対応

適格請求書発行事業者は、国内において課税資産の譲渡等を行った場合に以下義務があります。

1. 適格請求書の交付義務

2. 返品や値引きをした際の適格返還請求書の交付義務

3. 修正した適格請求書の交付義務

4. 交付した適格請求書の写しの保存義務

免税取引、非課税取引、不課税取引のみを行った場合は適格請求書の交付義務は課されません。また、3万円未満の公共交通機関(船舶 、バス又は鉄道 )による旅客の運送など一定の場合には、適格請求書の交付義務が免除されます。これらの義務について、どうやって交付や写しの保存を行うか、今までの業務フローの体制の変更を行うか、社員へインボイス制度に関する研修を行うかなど検討する必要があります。


●適格請求書の記載事項への対応

適格請求書の様式は法令等で定められていません。必要な記載事項が記載された書類であれば、名称や様式を問わず適格請求書に該当します。ひとつの書類のみで全ての記載事項を満たさなくても、交付された書類の相互の関連が明確であり、交付された事業者が内容を適正に認識できる場合には、これら複数の書類全体で適格請求書の記載事項を満たすことができます。また、不特定多数の者に対して販売等を行う小売業者、飲食店等については書類の交付を受ける事業者の名称を記載しない適格簡易請求書の交付が認められます。自社の事業に適した適格請求書の作成のため、現在の区分記載請求書の記載事項に項目を追加するなどの変更をし、場合によってはフォーマットの変更を検討する必要があります。


●インボイスの電子化と保存方法の検討

インボイスの交付方法は、書面での交付以外に電磁的記録での提供(電子インボイス)が認められています。電子インボイスには、光ディスク等の記録用の媒体による提供のほか、いわゆるEDI取引を通じた提供や電子メールによる提供、Webサイトを通じた電子データの提供などが該当します。電子インボイスは、電子帳簿保存法上(電帳法)の電子取引に該当します。電子帳簿保存法の要件を満たす必要はありますが、電子インボイスを検討し、請求書発行の電子化やペーパーレス化を進める機会としましょう。




■買手側の準備対応のポイント

●免税事業者である取引先の把握

インボイス制度では、仕入税額控除を受けるためには適格請求書及び帳簿の保存が要件となります。免税事業者や消費者などインボイス発行事業者以外から行う課税仕入れについては、仕入税額控除を受けることができません。ただし、一定の期間については免税事業者等からの課税仕入れについて仕入税額控除ができる経過措置が講じられています。取引先のうちインボイス発行事業者以外の事業者を正確に把握し、この事業者からの課税仕入れの金額を集計できる体制を整えることが重要です。取引先に免税事業者がいる場合には、事前に相手先の対応方法など動向を確認しておきましょう。



-Q&A-

Q1. (売手)インボイス発行事業者の登録申請をする際に気をつけることはありますか。


法人事業者は、「適格請求書発行事業者の登録申請書」の記載について、登記上の情報を正しく記載しなければなりません。誤りの多い項目として、本店所在地の建物名・ビル名や法人名(大文字・小文字、アルファベット・カナ表記)が正確に記載されていないことが注意喚起されています。


Q2. (売手)記載内容に誤りがあった場合のインボイス発行事業者の交付義務について


インボイス発行事業者は、記載内容に誤りのあるインボイスを発行した場合には、事業者の求めの有無に関わらず修正インボイスを交付しなければなりません。現在の区分記載請求書制度で可能な交付を受けた事業者による自発的な修正や追記では、仕入税額控除を受けることができませんのでご注意ください。


Q3. (売手)インボイス発行事業者の登録日から通知日までの間に交付した請求書はどうなりますか。


登録日から通知日までの期間に交付した請求書は、登録番号がないためインボイスの記載事項を満たしていません。ただし、通知を受けた後に、改めて登録番号などの記載事項を取引先に書面で通知をすることにより、インボイスの記載事項を満たすことができます。なお、既に交付した書類との相互の関連が明確であり、書面の交付を受ける事業者がインボイスの記載事項を適正に認識できるものに限ります。


Q4. (売手)登録番号が通知されましたが、インボイス制度開始前に請求書に記載してもいいでしょうか。


現在の区分記載請求書の記載事項が記載されていれば、インボイス制度開始前に登録番号を記載しても問題はありません。なお、インボイスの発行に対応したシステム改修を行い、登録番号以外のインボイスの記載事項を満たした請求書を発行する場合も区分記載請求書としての記載事項を満たしますので問題はありません。


Q5. (買手)取引先がインボイス発行事業者の登録を受けているかの確認はどうすればいいでしょうか。


「適格請求書発行事業者公表サイト」で確認することができます。公表される項目は、名称・本店所在地・登録番号・登録年月日・取消年月日で、インボイス発行事業者として登録された日の翌日に掲載されます。検索方法は登録番号のみとなりますので、受領した適格請求書に記載された登録番号から確認をすることになります。


Q6. (買手)取引先から受けたインボイスの電磁的記録の提供をどのように保存すればいいでしょうか。


取引先から紙のインボイスの交付に代えて、電子インボイスよる交付を受けた場合には、仕入税額控除の適用を受けるため、その電子インボイスを保存する必要があります。電子データをそのまま保存するときは、電子帳簿保存法に規定する電子取引の要件を満たした保存を行う必要があります。なお、受領した電子データを紙に印刷して保存する方法は、消費税法上は認められますが、法人税法上は認められませんので注意が必要です。


Q7. (買手)インボイス保存方式では、帳簿だけで仕入税額控除の要件を満たす場合はありますでしょうか。


請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、3万円未満の公共交通機関による旅客の運送や自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等、従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費などは、帳簿の通常の記載事項に加え、「帳簿のみで仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨」を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。



本記事は、アクタス税理士法人より掲載許可をいただき、同ホームページにて公開されている記事を転載したものです。
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