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COLUMN

2021.11.18税務コンサルのポイント

【事業承継スキーム】自己株式、定款の見直し等の基本的な考え方

  • 富裕層コンサルのイロハ
  • 事業承継スキーム

Q. 自己株式、定款の見直し等の基本的な考え方

自己株式を利用した事業承継案についてご教示ください。


Answer

以下の点につき留意が必要です。

【解説】
自己株式を利用した事業承継案では、定款の見直しは必須です。
会社法では、定款に「相続その他の一般承継により株式を取得した社員に対し、会社がその株式を売り渡すことを請求することができる」と定めることができるとしています。会社が相続人に対して売渡請求ができるようになり、株式の分散を防止できるようになります。なお、売渡請求には特別決議が必要です。会社は一方的な売渡請求で取得することができ、相続人は拒否できないこととされています。

1. 定款の変更に期間制限はない
この強制売渡請求を定款に盛り込む際には、期間制限がありません。どのようなタイミングでも可能です。この点は非常に問題があると指摘する見解もあります。

2. 価格決定でもめないために
この強制売渡請求は、実務では価格でもめるケースが多くあります。相続人は価格決定申立というものができ、申立がなされると、相続人と会社で価格について合意が取れなかった場合、裁判所で価格決定することになります。
これを避けるためには、生前に株式を動かすことが定石となります。生前に、税務上の評価額よりも高い株価で(高額譲受になるということ)、すなわち、色を付けるという形で株式を譲り渡してもらいます。
裁判所での価格決定の手続きでは、会社と相続人それぞれが、「この会社の株式に関してはこのような価格が妥当だという鑑定書がある」と鑑定書合戦を行うことになります。
裁判所が価格決定をして紛争が落ち着くことになるか、いわゆる和解によって落ち着くかというルートをたどります。この価格決定の申立という制度は非訟です。裁判外で、価格決定について合意したということです。
このような事実上の和解か、裁判所の価格決定を約1 年半ほど待つという形で決定するしかないことになります。

3. 株主との合意による取得
株主との合意による取得をする場合、特定の株主から自己株式を買い取る場合には、すべての株主に売り渡す機会を与えるのが、会社法では原則となっています。
相続については、会社が株主の相続人からのみ相続した株式を取得することが認められています。これには、非公開会社で、かつ相続人が相続後に議決権を行使していないことが条件となっています。
しかし実際は、この相続人からの取得についても、価格でもめることが多いと思われます。
価格決定の申立ができることは、上記の売渡請求の場合と同様です。そのため、生前に動かすのが定石となります。
友好的な少数株主からの買取りの場合には、まず友好的な少数株主と会社側で金額や売却時期について合意を取っておきます。その後に、その友好的な少数株主から会社に、譲渡承認を請求してもらいます。会社はその譲渡承認に対して拒否します。承認を拒否すると、会社は他に適当な買取人を見つけなければなりません。これを、指定買取人と言います。この指定買取人をオーナーや会社にして、友好的な株主からあらかじめ決められた金額・売却時期に応じてその株式を買ってくる形で済ますのが簡便かと思われます。
特定の誰かから株式を購入する場合、会社法上は、他の株主も「自分も売りたい」と言うことができることになっています。上記の方法であれば、その心配がなくなります。


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伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。