区分所有と共有の違い
家屋建築の際に、区分所有にするか、共有にするかというのはよくある御質問だと思います。
Aさんは、母親の土地に、Aさん家族と母親で賃貸併用住宅を建てることを計画しています。(父親は既に他界)3階建ての建物で、各階120m2、各階の利用形態は次のとおりで計画しています。
1F 賃貸2室、母親居住1室
2F 賃貸3室
3F Aさん夫妻と子ども
資金は、母親がかなりの部分を出しますが、Aさんも住宅ローンを借りようと思っています。
母親の出すお金の一部を、住宅取得等資金贈与を使って、非課税で贈与を受け、その分をAさんの名義にする、ということも考えています。
また、Aさんは住宅ローン控除も受けたいと思っています。
仮にですが、建築費を9,900万円として、1Fあたり3,300万円となります。
3FのAさん居住部分は、母親から1,200万円、住宅ローン2,000万円、残りはAさんの自己資金。1F、2F部分は、母親が現金で出す、ということです。
そこで問題となったのが、登記をどのようにするか、ということです。Aさんは、1F・2Fを母親の名義、3FをAさんの名義ということで、区分所有登記を考えていました。
ところが、区分所有登記をしてしまうと、相続をする時に土地の評価が高くなってしまいます。なぜかと言うと、区分所有登記をした建物が建っている土地は、小規模宅地等の評価減が、母親の居住部分の床面積に対応する土地にしか、適用されないからです。平成25年度税制改正によるものですね。
居住用の小規模宅地等の評価減は、330m2まで80%も評価減をしてくれる特例です。これは、自宅を相続する時にはフル活用したいものです。
母親の居住している部分は、120m2の1/3、40m2です。建物全体は、120m2×3Fで、360m2です。40/360で、土地全体の9分の1しか、居住用の80%評価減は受けられません。
貸付用の評価減もありますが、これでは将来の相続税が、かなり高くなってしまいます。
そこで、建物は母親と共有にした方が良いのではないかと、提案しました。共有にすれば、居住用の小規模宅地等の評価減が、母親の住んでいる部分と、Aさん家族の住んでいる部分も含めて適用することができるからです。
この場合は、母親の住んでいる40m2に、Aさん家族の住んでいる部分120m2も加えた、160m2に対応する土地について、居住用の小規模宅地等の評価減を受けることができます。
残りの部分については、貸付事業用の小規模宅地等の評価減も受けることができます。
これで、相続税の方はかなり減額することができるので、Aさんもその方がいい、ということになりました。
ただし、共有することによって、使えなくなる特例もあるのです。まず、1つは住宅ローンが借りられなくなります。建物全体としてみますので、賃貸部分が1/2超となり、住宅ローンではなく、借りるとしたらアパートローンになります。そうなると、住宅ローン控除は使えなくなります。
住宅ローン控除の要件にも、自己の居住部分が1/2超、というものがあります。
さらに、使おうと思っていた住宅取得等資金贈与の非課税特例も、使えなくなってしまいます。これも、自己の居住部分が1/2超という条件があるからです。区分所有にすれば、その部分は100%居住用なのですが、共有ということであれば、建物全体でみますので、Aさんの居住部分は1/2を超えません。また、床面積の基準からいっても、住宅取得等資金贈与の非課税特例が使えません。この特例は、50m2以上240m2以下の建物である必要があるからです。
以上のように、賃貸併用住宅は、共有にするか、区分所有にするかで、税法の適用には大きな違いが出てきてしまいます。
どちらが良いのかは、家族の状況、建物の使い方、他の財産も含めた財産の状況などで変わってくるでしょう。
専門家に相談しながら、よくシミュレーションしてみることが大事だと思います。