本コラムは、(株)日税ビジネスサービスの研修でも講師としてご活躍いただいている上原重典先生に、タイにおける現地の会計・税務、日本本社との取引に対するコンサルティング、現地社員人事制度の構築、進出・撤退、ローカルファイルの作成支援等の経験をもとに、タイの会計・税務制度や事業活動する上で必要になる知識等についてご解説いただきます。この情報が関与先様へのアドバイスの一助となれば幸いです。なお、上原先生のプロフィールは、本ページの最後にてご確認いただけます。
こんにちは。 日本・タイで会計・税務をはじめ、進出相談等を提供しているAlpha Professionsの上原です。今回は「サバーイ」、「マイペンライ」、「ダイ」といった言葉に象徴される「タイの特徴」といったところをお話ししたいと思います。
第2回 タイで働く ~ タイ人の特徴 ~
日本人がタイに赴任して最初に職場でよく耳にするタイ語は、「サバーイ」、「マイペンライ」、「ダイ」といった言葉ではないでしょうか?
今回はこの3つの言葉中心にタイ人の特徴をお話しいたしましす。なお、個人的な印象も多く、すべてのタイ人が今回ご紹介するような人ではないことは先にお断りしておきます。
まず「サバーイ」という言葉ですが、こちらを直訳すると「心地よい」という意味になります。日常では挨拶として「サバーイディーマイ」としてよく使われます。日本語で言えば「ご機嫌いかがですか」といった感じで、英語では、「Hello, How are you?」といったところです。しかしこの言葉は、至るところで使われており、その言葉のニュアンスも様々です。特に仕事、職場においては、時として重大な問題が潜んでいることすらあります。
タイ人にとって、働きやすい職場というのは、まさに「サバーイ」な環境にあるところです。簡単に言ってしまえば、「仕事はそれほど多くない(忙しくない)」、「残業代はしっかり払われる」、「あまり責任を持たされない」、「昇給・賞与がある」等、と言ったところですね。特に日本人管理者の立場からすれば、「甘ったれたこと」ばかりなんです。
しかし残念ながら、タイ人のライフスタイルは、「自分を含めた家族中心」であることから、私生活を犠牲(?)にしてまで仕事に没頭する社員はほとんどと言ってよいほど「いない」ということになってしまいます。また会社内での人間関係も時として微妙なところがあり、「あの人と一緒に仕事するのは、マイサバーイ」というタイ人社員も時としております。「マイサバーイ」というのは、「サバーイ」の否定形となるので、「心地よくない」といったニュアンスとなります。その原因の多くは「仕事に厳しい」、「自分より年下だ」、「性格が悪い」等々様々ですが、仕事に対する厳しさにおいては本来当たり前のことですが、時としてそれを非常に嫌う社員もおります。また、タイ人の社会は、身分制度があるわけではないですが、意外と年功序列的な傾向は強く、年長者に対してはあまり意見をしない、言うことに従う傾向があります。したがって自分よりも年少の人が上の立場になると、途端に反発することもしばしばです。従業員がたくさんいる会社では、それ自体が問題になることは稀だと思いますが、多くの中堅日系企業の場合、製造業以外ではタイ人社員は4,5人から多くても20人前後ではないでしょうか。そのような組織の中で、年功序列が崩れた人事体制になっていると、時としてこのようなトラブルに見舞われることがあります。さらに現在のタイは学歴偏重社会に近いところがあり、都市部で働く多くは大卒以上となります。よって地方出身者の高卒や専門学校(この呼び方が良いのか微妙ですが、わかりやすくするためにあえてこの言葉を用います)卒業のタイ人社員を下に見る傾向があります。
さらに職種によっては出稼ぎ外国人を多く採用しており、タイ人からすれば、もはや自分たちがやる仕事ではないといった意識を持っています。これは日本においても、外国人技能実習生という大義名分のもとで、同じように外国人労働者を雇う一部の雇用主がいるという現状を鑑みれば同じなのでしょう。いずれにしてもタイ人にとって職場環境、雰囲気といったところは、長期的に働くには非常に重要な条件の一つであることは間違いないですね。
次に「マイペンライ」という言葉ですが、こちらは日本語で言えば「大丈夫」といったニュアンスになります。どのような時にこの言葉が使われているかと言えば、例えば「何か失敗をした場合」に、「マイペンライ」とすぐに言ってしまうんですね。何で「大丈夫」なのかさっぱりわからない事もしばしば…。
タイ語は日本語や英語に比べると、同じ言葉でも、使う場面によってその意味合いや重要度が異なることがあります。それを踏まえると、この「マイペンライ」といったときに、「大丈夫だよ」といったレベルであれば、まだ許容範囲何のかもしれませんが、時として「気にしていない」といったニュアンスで話す場面も出てきます。仕事においては、本来、「言語道断」なところです。もはや「緩さ」をこえて「無責任」に近い感覚となります。
しかしながら多くのタイ人は何か問題があった場合には、かならず「マイペンライ」と最初に言います。プライベートでは、「失敗や不都合なこと」に対しておおらかであり、特に不快に感じることはないのですが、仕事においては、やはり日本人としての価値観で考えて対応しないといけないケースは多々出てきます。タイ人からすると、「なぜ?」といった感想を抱くこともしばしばです。これはもはや国民性の違いであり、仕事に対する意識の違いでもあるため、ある程度は仕方のない範囲としたとしても、日系企業として現地で仕事をする限りは、日本人としては、真実をとことん追求する意思を持たないと流されがちになり、時に大きな問題に気が付かない状況に陥ってしまうということあります。
最後に、「ダイ」という言葉ですが、こちらは日本語では「できる」、英語でいうところの「Can」に類似した言葉になります。よく仕事の会話の中では、「これは、(期限までに)できますか」とか、「このことはできますか」といった質問に対して、大半のタイ人は「ダイ(できる)」と答えます。しかしながら、これはこちらが要求する結果を出すこと、つまり「仕事が完了できることを意味するものではなく、あくまでの対応可能、結果は???」といったニュアンスが多いです。多くのタイ人は、「ダイ」の否定形である「マイ ダイ」は仕事の会話ではあまり言いません。これは「できない」と答えることに対して悪いイメージを持たれたくないという自尊心の高さに起因するのではないかと思います。よくとらえれば「ポジティブ」、悪くとらえれば「自信過剰」といった感じです。したがって業務を進めるうえでは、詳細なステップや期限をしっかり確認したうえで、対応可能なのかどうかを確認しないと、結果が伴わない状況も起こりかねません。
今回はタイ人がよく口にする言葉から、タイ人の気質というものを紹介してみしたが、特にタイ人が悪いというのではなく、感覚が大きく異なるというところをご理解いただけるとよいと考えています。タイは観光においては、「ほほ笑みの国、アメージングタイランド」と称されるように、ホスピタリティの高い国であることは間違いないのですが、「ビジネス」の面では、当然のことながら全く違った側面があるということです。
現在は新型コロナウィルス感染により、渡航制限もあることから新たな進出というのが減少していますが、アフターコロナを見据えた動きもちらほら出始めてきています。またコロナ問題を受け、日常業務においても、在宅勤務やテレワークを中心に進める企業も多いかと思いますが、そのような状況になればなるほどタイ人の気質を理解してうえで勤怠管理の手法を考えないと、結果として仕事をしない社員が出てきたり、業務効率が下がる危険性もあるのが実情ではないかと思うところです。
これからタイ進出を目指す時には、「タイ人と一緒に仕事をする」という点においては、しっかりとした会社の理念や計画、方向性等を日本人自身が示し、そのために何をすべきかをしっかりと指導するという意思を強く持っていただく必要があると筆者自身は感じるところです。
次回は本来の分野に戻り、タイの税制を何回かに分けて紹介していきたいと思います。※コラムに関するご質問は受付しておりません。予めご了承ください。
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