MENU MENU

COLUMN

2021.11.02M&A全般

マイクロM&A

  • M&A

本コラムでは、当社の経験豊富なシニアマネージャーが執筆しております。この情報が関与先様へのアドバイスの一助となれば幸いです。



筆者がM&Aアドバイザリー業務に従事し始めた約25年前、日本ではM&Aという言葉すら一般に知られておらず、買収や合併は経営不振に陥った企業の救済案件が多く、ネガティブなイメージを持たれることが多くありました。
時は流れ、十数年前からはM&Aだけではなく、TOB、プライベートエクイティファンド、MBOなどM&Aに関連する専門的な言葉がニュースなどで日常的に耳にするようになり、金融機関関係者間だけではなく、広く一般に知られるようになりました。
そして昨今は後継者不在問題に関するニュースが増え、これを理由としたM&AがM&A件数の中で最も多くなっています。
このような状況下、スモールM&Aという言葉が生まれ、未上場の中小企業のM&A件数も年々増加しています。

ところで「マイクロM&A」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
一般的にマイクロM&Aとは譲渡金額が2,000万円程度以下のM&Aを指します。
M&Aアドバイザリー業務を提供する業者が通常使う手数料率(レーマン・テーブル)は譲渡金額が5億円以下の場合は5%です。
譲渡金額が2,000万円の場合手数料は100万円です。
時間と労力に見合うリターンが得られないため、M&Aアドバイザリー業務提供業者が手掛けたがらない規模の案件がマイクロM&Aとなります。

前置きが長くなりましたが、今回はマイクロM&Aの特徴、アドバイザー選定方法について述べたいと思います。

1. マイクロM&Aとは
前述の通り、マイクロM&Aとは譲渡金額が2,000万円程度以下の金額で株式、事業などを売買するM&Aで、当社は設立以来、多くのマイクロM&Aに携わってきました。
一般的なM&Aでは後継者不在を理由としたケースが多数存在しますが、企業の成長戦略実現のためのM&Aが多いのも事実です。

一方で、マイクロM&Aは

①後継者不在の個人経営

②継続的赤字、債務超過状態にあるが、小規模で自力再建が困難

③自社・自力での成長は限界、リスキーなため大企業と組みたい

を理由としたM&Aが多く、中でも①、②が圧倒的多数を占めます。

①の企業は現経営者が長年にわたり経営し、今後も一定の収益を上げられる企業であり、個別の特殊事情が無い限り比較的容易に譲受先が見つかります。
一方、②の企業は赤字の理由、債務超過となった理由を見極め、譲受先と共に改善策を講じられなければM&Aとして成立しませんし、特に債務超過の場合、その金額が大きければ債権者の協力無くしてM&Aは成立しません。
しかし、事業そのものに魅力があって、これらが解決できれば譲受企業としては事業基盤を活用できたり、あるいは譲受企業によってはゼロスタートより容易に新規事業を開始できる場合もあります。

2. マイクロM&A増加の背景
高度成長期の日本経済を支えてきた経営者の高齢化が最大の要因であることは疑う余地はありませんが、M&Aアドバイザリーサービスを提供できる人材が増加し、またインターネットの普及に伴い、オンラインでマッチングできるプラットフォームの充実もその一因といえます。

3. マイクロM&Aのメリット・デメリット
マイクロM&Aのメリットは一般的な未公開中小企業のM&Aと同様、まずは企業の存続、事業の継続及び従業員の継続雇用の確保と言えます。
次に、オーナーの創業者利潤の実現と個人保証、担保等からの解放、そして譲渡先企業での事業の成長も期待できます。

一方、デメリットは、経営の意思決定はすべて譲受側のものとなり、創業者、あるいは創業家ではなくなることにより、当該企業の良さが失われる可能性や、いわゆる“看板”の消滅です。

4. マイクロM&Aの進め方及びアドバイザー選定
さて、M&Aアドバイザーの選定は、M&Aを成功させるために非常に重要です。

その選定において再重視すべき点は、M&Aの経験が豊富かどうかです。
M&A案件のアドバイスをするのはM&Aアドバイザリーサービス提供会社ではなく、そこに所属する個々の人間が行います。
もちろん、M&Aで名の通った企業や大手金融機関には経験豊富な人材も多いですが、一方で、他部署からの異動で経験が浅い人がいるのも事実です。
従って、過去に何年、どのような規模の、どのような業界の案件を何件扱ってきたのかをまず確認することが必要です。
M&A案件は一般に公表されていることが多いので、具体的なM&A企業名を聞いてみるのもよいでしょう。
多くの従業員やお取引先様を見てこられた経営者の方は、この質問に対する受け答えを見ればその人間がどの程度懐が深いアドバイザーなのかをある程度見極められるのではないでしょうか。
経験が浅いと、M&A手法の臨機応変な提案もできないでしょうし、相手企業との条件交渉においても先方社長や先方のアドバイザーに押し込まれることになるでしょう。

次に、どれだけ小規模案件であっても真摯に向き合える人間かどうかの見極めです。
M&Aアドバイザリー業務従事者は、年間手数料で評価されますので、少しでも大きな案件に軸足を置くのが普通です。
それでも小規模案件に強いコミットができる人間を選ぶことが重要です。


M&Aニーズをお持ちの関与先様がいらっしゃいましたら、ぜひ当社へご相談ください。





あわせて読みたい!
会社分割の類型事業譲渡、会社分割による第三者承継



サービスのご案内
日税M&A総合サービス日税事業承継支援サービスメールマガジンのご登録


株式会社日税経営情報センター