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2021.08.11税務情報

電子帳簿保存法の改正 #1 電子取引

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  • 電子取引


令和3年度の税制改正において、電子帳簿保存法の「帳簿書類保存」「スキャナ保存」の制度は、大幅な要件緩和が行われました。これにより経理実務の電子化が一気に進み、経理の生産性が大きく向上する可能性があります。ただ「電子取引」については、一部取扱いが厳しくなった部分もあります。
そんな電子帳簿保存法の実務的な取扱いを確認できるのが「電子帳簿保存法一問一答」ですが、令和3年7月に改正対応版が公表されました。一問一答は、「帳簿書類関係」、「スキャナ保存関係」、「電子取引関係」の3冊に分かれています。今回から2回にわたってこの一問一答の実務的なポイントをご紹介します。
まず今回は、取扱いが厳しくなり、実務的な関心が高い「電子取引」について解説します。なお、この改正法の施行は、令和4年1月1日となっております。

■電子取引について

電子取引とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書などの書面でやり取りされていた情報を電磁的方式で授受することをいいます。具体的には、EDI、インターネット、電子メール、クラウド利用による取引になります。電子取引に係る電磁的記録(以下、「データ」)の保存については、改正前より一定の要件のもとでデータのまま保存することが求められておりました。ただし、従来は、出力書面等の保存をもってそのデータの保存に代えることができるとされていたため、出力して保存していることがほとんどでした。今回の改正により、その代替的な措置は廃止となり、データでの保存が必要となります。

■電子取引に係るデータ等の保存要件



■電子取引に係る改正点

1. 適正なデータ保存を担保する措置の見直し

●申告所得税及び法人税の保存義務者における電子取引の取引情報に係るデータ等の保存について、書面やマイクロフィルム(書面等に出力して保存することができる代替方法が廃止されます。なお、消費税においては、引き続き出力書面による保存は可能となります。

●電子取引の取引情報に係るデータ等に関して、仮装・隠蔽による申告漏れ等に課される重加算税が10%加重されることになります。


2. 検索要件の緩和
検索要件の記録項目について、取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先限定されます。
なお、税務職員の質問検査権に基づくデータ等のダウンロードの求めに応じる場合には、範囲指定及び項目の条件組み合わせで行える検索機能の確保は不要となります。また、この場合において、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の小規模事業者は、検索要件のすべてが不要となります。

3. タイムスタンプ付与期間の要件緩和
タイムスタンプの付与は、データ等を授受してからおおむね7営業日を基本としつつ、授受からタイムスタンプ付与までの各事務処理に関する規程が定められている場合には最長で2か月とおおむね7営業日以内に付与すればよいことになります。

電子取引の最大の改正ポイントは、書面等による代替保存が廃止されることであり、データ等としての保存が必須になることです。さらに、保存したデータ等は検索できなければならず、税務調査の際に、税務職員からのデータ等のダウンロードの求めに応じるのかを検討しておくこともポイントになります。


-Q&A-

Q1. 電子取引データの保存システムがなく、検索機能を確保する保存はどのようにすればいいですか?


保存システムがない場合でも、次の点に基づく保存をすることで検索機能を充足することになります。

1. 以下のような方法によるデータの保存等を行う

①請求書データのファイル名に規則性をもって内容を表示する
ファイル名に「取引年月日」「取引金額」「取引先」を抽出に妨げがないように統一して記載する
例)2022年(令和4年)1月31日にABC社から受領した110,000円のPDFの請求書
⇒「20220131_ABC社_110,000.pdf」

②索引簿を作成し、索引簿を使用して検索できるようにする
エクセル等の表計算ソフトにより、取引データに係る取引年月日その他の日付、取引金額、取引先の情報を入力して一覧表を作成し、フィルターやピボットなどの集計機能を使い、入力された項目間で範囲指定、二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件設定が可能な状態にする

2. 「取引の相手先」や「各月」など任意のフォルダに格納して保存する

3. 「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程」を定めて運用する


Q2. 電子取引によるデータ等の授受には具体的にどのような取引が該当するのでしょうか?


A2. 次のような取引が電子取引に係るデータ等の授受に該当していきます。

1. 電子メールにより請求書や領収書等のデータを受領すること

2. ホームページから請求書や領収書等のデータのダウンロード画面のスクリーンショットをすること

3. 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用すること

4. クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマホアプリ決済データ等を活用したクラウドサービスを利用すること

5. その他EDI、ペーパーレス化されるFAX機能の利用、DVD等の記録媒体を介して受領すること


Q3. 電子メールにより領収書等のデータを受信した場合、どのように保存すればよいのでしょうか?


電子メールにより取引情報を授受する取引も電子取引に該当するため、データとしての保存が必要になります。この時、具体的には、電子メール本文に取引情報が記載されている場合は当該電子メールを、電子メールの添付ファイルにより領収書等のデータ(PDFファイル等)が授受された場合は当該添付ファイルを、それぞれ、ハードディスク等の記録媒体やクラウドサービス等に記録・保存することになります。


Q4. 従業員の立替経費で、領収書を電子データで受領している場合、保存をどのようにしますか?


この電子取引に係るデータ等については、従業員から集約し、会社として取りまとめて保存し、管理することが望ましいです。しかし、直ちに電子データ等を集約する体制を構築することが困難な場合も想定されることから、一定の間、従業員のパソコンやスマホ等に保存しておきつつ、会社としても日付、金額、取引先の検索条件に紐づく形で、その保存状況を管理しておくことも認められます。
なお、この場合においても、電子データ等の保存要件を満たす必要があります。


Q5. 令和4年1月1日が事業年度の途中になる場合、その年度は改正前の保存方法でいいのでしょうか?


令和4年1月1日以後に行う電子取引の取引情報については、改正後の保存要件により保存しなければなりません。そのため同一年度の電子取引であっても、令和3年12月31日までに行う電子取引と令和4年1月1日以後行う電子取引とではデータ保存の要件が異なることになるので注意が必要です。



※コラムに関するご質問は受付しておりません。予めご了承ください。



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※本記事は、アクタス税理士法人より掲載許可をいただき、同ホームページにて公開されている記事を転載したものです。
https://www.actus.co.jp/library/knowledge/list.shtml




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