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COLUMN

2021.05.31中小企業とM&A

≪M&Aにおける企業価値算定②≫マーケットアプローチ【vol.43】

  • M&A

本コラムでは、当社の経験豊富なシニアマネージャーが執筆しております。この情報が関与先様へのアドバイスの一助となれば幸いです。



↓前回分はこちら↓
 ■≪M&Aにおける企業価値算定①≫純資産価額法と年買法について


マーケットアプローチとは、対象企業を他の類似した企業や業種との比較を通じて価値評価を行なうというものであり、幾つかの財務数値と市場株価との関係に注目して評価を行ないます。

このマーケットアプローチの代表的なものとしては類似企業比較法(マルチプル法)というものがあり、類似企業の財務指標の株価倍率(マルチプル)を基に対象企業の株価を算出します。
使用する指標は任意に選択しますが、代表的なものとしては、EV/EBITDA倍率が挙げられます。
分母のEBITDAは、金利・税金・減価償却・その他償却前利益(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)を表し、簡便的には損益計算書の税引前利益に支払利息と減価償却費を加算するか、或いは営業利益に減価償却費を加算して算出しています。
税金、資本構成、減価償却の影響を排除して事業から得られるキャッシュフローを評価しようという指標です。

一方、分子のEVは、エンタープライズバリュー(Enterprise Value)とも言い、株式時価総額に負債価値を加算した企業全体としての価値をあらわす概念ですが、M&Aにおいて一般的には株式時価総額+有利子負債-現預金として算出されています。
キャッシュが差し引かれていますが、これはキャッシュを株式や負債を通じた調達資本が事業に投資されていないものとして捉えているわけです。

M&Aでは、対象企業と類似した企業のEV/EBITDA倍率をまず算出し、その倍率を前提として対象企業の株価を逆算して求めます。
類似企業としては財務情報が開示されている上場企業から選択し、実際の市場での取引株価を踏まえて対象企業を評価する点で客観性の高い評価方法と言えます。
弱点としては、当然のことながら、対象企業に類似した企業が見つからない場合には使用できないということです。

対象企業の株価を周りの企業や業種から客観的に捉える考え方としては、国税庁の財産評価基本通達で示される類似業種比準方式もその一つということが出来ます。これは、上場企業の業種別株価を用いて、配当金・利益・純資産の3点から企業規模を斟酌して評価額を算出するもので、日本では非上場株式に係る課税実務において用いられている客観性の高い方法です。
M&Aにおいてもこの類似業種比準方式を用いても構わないのですが、M&Aでは、対象企業の事業から創出されるキャッシュフローに着目する必要性がある為、客観的かつ合理的な評価としては類似企業比較法が広く用いられています。


マーケットアプローチには、その他に市場株価法類似取引比較法というものもあります。
市場株価法は市場株価を基準に価値評価を行うものであり、市場性のある上場企業同士での合併比率や株式交換比率の算出に使用されますが、市場で不自然な株価の動きが確認される場合には注意が必要です。

類似取引比較法は、類似企業比較法と同様に財務指標に着目しますが、類似企業比較のように市場倍率ではなく、あくまでも類似したM&A取引の売買価額を基にした倍率を利用するという点が特徴です。
実際のM&A取引のデータをベースとするので市場に過熱感がある場合には過度な買収プレミアムにつながりかねないという点には注意が必要です。

マーケットアプローチの各方法に共通するメリットとしては、算出が比較的シンプルであり、市場での比較がなされていることから、客観性において大変優れているということが言えます。
しかし逆に、市場データに何らかの歪みがある場合には適正な評価とならない場合があり、そもそも類似した比較対象や市場データが存在しない場合には使用できないということや、企業の個別事情を反映させ難いという点が欠点として指摘されます。

M&Aにおける企業価値評価には様々なアプローチがあり、それぞれ一長一短がありますので、特定の手法にだけ依存するのではなく複数のアプローチで評価することが重要です。


次回は、インカムアプローチについて取り上げたいと思います。





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