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COLUMN

2021.04.30M&A全般

コロナ禍で日本企業のM&A活動は変化したか

  • M&A

本コラムでは、当社の経験豊富なシニアマネージャーが執筆しております。この情報が関与先様へのアドバイスの一助となれば幸いです。



世界情勢、社会情勢の変化スピードがかつてないほど加速度的に増している中でのコロナ禍の発生で、人々の生活様式、消費行動はめまぐるしく変わり続け、ビジネスの世界でもリモートワークが定着、フェイストゥフェイスからWebにシフトし、企業はDX化等にとどまらず様々な対応を求められています。

こうした環境下、2020年1~12月のIN-IN M&A(注1)案件数は最初の緊急事態宣言が発出された4、5月に大きく落ち込みましたが、6月以降は過去最高件数を記録した2019年と同水準またはそれ以上で推移し、終わってみれば通年で対前年比1.9%の微減に留まる活況でした(下のグラフ参照)。


出典:レコフ MARROnline

これは、元々財務基盤が盤石ではなく成長が頭打ちとなっていた中小企業がコロナ禍で業績不振に陥って売却を決断したり、後継者不在企業がコロナ禍を機に事業継続を断念して売却したりするケース等が増えていることも要因ですが、一方で生き残りをかけた事業の再構築や事業転換等を目的とした前向きなM&A活用例も増加しています。

昨年以降、経営者の方々から筆者が相談を受けた際の印象は、自社事業の継続・維持に対する危機感がかつてないほど強くなったことと、危機回避策実行スピード感の二点でコロナ禍以前と全く異なります。
以前は、M&Aを活用した事業再構築や成長戦略の実行は検討開始から実現まで数年をかけてじっくり、という時間軸が一般的でしたが、今や、半年から長くても1年で実現という姿勢で臨まなければこの危機を乗り越えられないと考えている経営者が大多数という印象です。

本稿では近年のIN-IN M&Aの要因、目的の類型と傾向に関して考察をし、それらに対する行政の支援策の一部を示すことで、税理士先生の関与先へのアドバイスの一助となれば幸いです。

近年の典型的なIN-IN M&Aの要因、目的の類型と傾向は以下の通りです。

1. 事業承継

ここ数年最も多いM&Aの類型で、公表されている件数だけでも圧倒的多数ですが、非公表案件も同程度あるのではないかと言われています。
また、コロナ禍を機に経営者の方々が決断を促され、今後さらに増加すると見込まれます。


2. 救済/再生

コロナ禍により売上高が落ち、資金繰りが悪化した企業が売却を決断したり、国の政策的な緊急融資等を受けられる場合は企業価値が棄損しないうちにスポンサーを探したりする企業が増加しています。

参考:日本政策金融公庫HP該当ページURL
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/covid_19_m.html
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/covid_19_t.html


3. 新規事業開発/事業転換

既存の事業だけでは生き残れない企業、例えば(これはコロナ禍要因ではなく世界的な技術革新が要因ですが)ガソリン車特有の部品を製造していた自動車部品メーカーは電気自動車に必要な部品の開発・製造・販売をするか、さもなくば新たな事業の柱を建てなければ生き残れません。
また、テレワークの定着や時短要請で売上が極端に低迷している外食企業は、例えばワタミが居酒屋だった店舗を焼肉店に転換したり、「ステイホームセット」等のテイクアウトメニューを開発したり、テレビショッピングに進出したりしているように、ビジネスモデルの転換が必要でしょう。(注2)

資本力がある企業は自前でできますが、そうでない企業が業態や業種の転換、事業再構築等のためにM&Aを活用する例がコロナ禍を機に増加傾向となり、経済産業省の『事業再構築補助金』(下記URL①参照)を活用する案件も多々進められています。
上記業種以外でも、異業種企業の買収やベンチャー企業・スタートアップ企業への出資などを通じた成長戦略の実現を目指すM&Aは従前以上に活発になっており、国は税制面でも『経営資源集約化税制』(下記URL②P.27参照)等でこうしたM&Aを支援しています。

参考:経済産業省HP該当ページURL
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/index.html
https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2021/zeisei_k/pdf/zeiseikaisei.pdf


4. 事業再編

複数の事業を展開する大手企業においては、物言う株主が出現し経営者が株主価値の最大化に主眼を置くようになった20世紀終盤以降、自社の強みを最大化するためのグループ内再編やノンコア事業の売却等の事業再編を目的としたM&Aが継続的に行われています。


5. 業界再編

従前は各業界の上位企業がマーケットシェア拡大、技術力・調達力・販売力等の向上を目指して行うケースが中心でしたが、昨今はコロナ禍で変化・縮小する市場で生き残りをかけて行われるM&Aが増加しています。



上記IN-IN M&Aの要因、目的の傾向を見ると、コロナ禍発生によって特別なM&A活動が開始されたわけではなく、以前から潜在、存在していて先送りされがちだった課題や問題が、コロナ禍を機に本来あるべきスピード感をもって対処されるようになったという印象を受けます。

一日も早くウィズコロナ時代が終わり、アフターコロナ時代が来ることを願って止みません。


注 釈

(注1) IN-IN M&A : 日本企業同士のM&A

(注2) ワタミは日本政策投資銀行から劣後ローンを中心に100憶円程度調達(2021/4/23日経新聞朝刊より)







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