不動産所得と計上の時期
不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶(総トン数20トン以上の船舶)、または航空機(以下、「不動産等」)の貸付けによる所得をいいます。アパート・マンション経営における収入の中心となる受取家賃、礼金、共益費、更新料や駐車料は言うまでもなく不動産所得です。
ただし、不動産所得のように見受けられるものでも、別の所得とされるものもあるので、ご注意下さい。例えば、アパートの貸付けであっても、下宿などのように、食事を供する場合、また、有料駐車場などでは自己の責任において他人の物を保管する場合であれば、事業所得または雑所得となります。
不動産を賃貸したことにより受け取る家賃、地代、更新料などをその収入に計上すべき時期は、原則として次のようになります。
<地代・家賃、共益費など>(1)契約や慣習などにより支払日が定められている場合は、その定められた支払日
(2)支払日が定められていない場合は、実際に支払を受けた日
※ただし、請求があったときに支払うべきものと定められているものは、その請求の日
<上記以外のもの> 家屋又は土地を賃貸することにより一時に受け取る権利金や礼金は、貸し付ける資産の引き渡しを必要とするものは引き渡しのあった日、引き渡しを必要としないものについては、契約の効力発生の日の収入に計上します。
敷金の取扱いについては注意が必要です。アパートやマンションの賃貸に関して受取るこれらの収入については、それ自体が賃貸人の安全を担保するためのものであり、契約の終了と同時に返還されるものなので、本来は不動産所得の収入金額として取扱うべきものではありません。
しかし、契約当初から(あるいは一定期間が経過すれば)、その一部ないし全部が賃貸人に帰属することが契約書などで取り決められているものがあります。このような収入は実質的には、更新料などと変わりがないものと認められるので、不動産所得の収入金額として取扱うこととなります。
その他、特殊な家賃の取扱いについては、契約書等を今一度よく確認し、不明な点は専門家に相談するようにして下さい。
規模による税務上の取扱いの違い
不動産所得は貸付け規模の大小によって税務上の取扱いが異なる項目があります。例えば、不動産の貸付けが「事業的規模」といえるものである場合には、一定の要件を満たせば以下の特典を受けることができます。
1.最高65万円の青色申告特別控除
2.専従者給与を全額経費にできる
3.資産損失を全額経費にできる この「事業的規模」か否かの判定は、貸付資産の規模、賃貸料収入の状況、貸付資産の管理に係る特別の人的・物的施設の設置等の状況を総合的に勘案して判断しなければなりません。しかし現実的にはこれらで勘案して決定されるものではありません。
多くの場合、課税庁が気にしているのは「5棟10室」という形式基準なのです。つまり、独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であることという基準です。
貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10室以上であることという基準もあります。
このいずれかに該当する場合は、多くの場合、事業とみなされます。もっとも、あくまでも、原則なので、この基準だけに固執してはいけませんが・・・。
そして、所得がおよそ1,000万円を超えるようであれば、「法人設立」という次の段階も検討できます。個人で事業を経営している場合には、その所得は個人事業主に集中します。その結果、所得税法において「超過累進税率」を採用している我が国では、所得が大きくなればそれに伴って税負担も重くなってしまいます。この所得を法人を通じて家族役員に分散させれば、それぞれの税率は低く抑えられることになります。
法人として受け取った収入は、役員・従業員に対して給与として支払うことができます。
この支払った額については法人の経費となり、給与として受け取った金額については、「給与所得控除」が適用されます。そもそも、法人で不動産事業に係わる経費は計上しているにもかかわらず、「みなし経費」としての性格がある「給与所得控除」を利用するということは、経費を2重に計上できているようなものなのです。節税効果は抜群といえます。