令和2年12月に「令和3年度税制改正大綱」が公表されました。令和2年1月に新型コロナウィルスの最初の感染者が確認されて以降、コロナ禍の1年となった状況を受けた税制改正となっています。
今回の改正はウィズコロナ・ポストコロナ後の経済再生やデジタル社会の実現を推進するための税制が盛り込まれることになりました。
法人に関する内容として、「デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制」や「繰越欠損金の控除上限の特例」、納税環境整備における「押印義務の見直し」、「電子帳簿保存における大幅な要件緩和」など盛り沢山な内容になっています。改正のポイントをコンパクトにまとめていきます。
1.すべての法人に影響のある納税環境整備について
(1)押印義務の廃止
■内容
税務手続きの負担軽減のため、税務署長等に提出する国税関係書類のうち、実印による押印や印鑑証明書の添付を求めているもの等を除き、押印義務が廃止されます。
■適用期日等
令和3年4月1日以後に提出する税務関係書類について適用されます。
なお、施行日前においても、運用上、押印がなくても改めて求めない方針になっています。国税庁のHPでは、既に押印の取扱いについて、見直しの対象となる税務関係書類についてその旨が明記されています。
https://www.nta.go.jp/information/other/data/r02/oin/index.htm
(2)クラウド等を利用した支払調書等の提出方法の整備
■内容
法定調書を提出する者が、あらかじめ税務署長に届出た場合には、認定を受けたクラウド等に備え付けられたファイルに、法定調書のデータを記録し、かつ、税務署に法定調書のデータ閲覧権限等を付与することで、法定調書の提出を行うことができるようになります。
■適用期日等
令和4年1月1日以後に提出する支払調書等について適用されます。
2. 大幅緩和で大きく利便性向上が期待される電子帳簿保存に係る所要の整備
令和元年度、令和2年度に引き続き令和3年度においても電子帳簿保存法関係の緩和が行われます。今回の改正内容は、社会のデジタル化を一気に加速するために大幅な要件緩和となります。具体的にはシステム要件・事前手続き要件・内部統制要件の見直しが主軸となり、電子保存の利便性が一気に高まることになりそうです。
■令和3年度の要件緩和
<1>国税関係「帳簿書類」の電磁的記録等による保存制度の見直し
1. 承認制度が廃止されます
2. 正規の簿記の原則に従って記録される国税関係帳簿書類について、自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合で、次の要件を満たす場合、電磁的記録の保存を行うことができるようになります。
①電子計算機のシステム関係書類を備え付けている
②電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれの操作説明書を備え付け、ディスプレイ画面等に、整然かつ明瞭に、速やかに出力できること
③税務職員が質問検査権に基づき国税関係帳簿書類の電磁的記録のダウンロードを求めた場合に、これに応じること
3.現行の要件をすべて満たし、その旨を届出た者について、その電子帳簿(優良電子帳簿)に関連して過少申告があった場合には、過少申告加算税を5%軽減されます
4.検索要件の緩和が行われます
【現行の検索要件】①取引年月日その他日付、取引金額その他主要な記録項目で検索
②日付又は金額の範囲を指定して検索
③2以上の任意の項目を組み合わせて検索
①の検索要件は「日付、金額、取引先」に限定
②③は、税務調査の質問検査権に基づくデータのダウンロードの求めに応じる場合には不要
1. 承認制度が廃止されます
2. タイムスタンプ要件が緩和されます
①付与期間を延長できます
現行:概ね3営業日以内
改正後:記録事項の入力期間(最長約2ヵ月)
②国税関係書類への自署が不要となります
③訂正又は削除の事実及び内容を確認できるシステム(訂正又は削除を行うことができないシステムを含む)に保存する場合は、タイムスタンプを不要とすることができます
3. 適正事務処理要件の廃止(相互けん制、定期検査が不要)されます
4. 検索要件が緩和されます
上記、<1>国税関係「帳簿書類」の改正内容と同じです
5. 電磁的記録の改ざん等の隠ぺい又は仮装があった場合、重加算税が+10%加重されます
1. タイムスタンプ要件が緩和されます
タイムスタンプ付与期間を、<2>スキャナ保存制度の期間と同じにし、最長2ヵ月以内に統一されます
2. 検索要件の緩和
上記、<1>国税関係「帳簿書類」の改正内容と同じです
さらに、判定期間の売上高が1,000万円以下の事業者等で、税務調査の質問検査権に基づくデータのダウンロードの求めに応じる場合には、検索要件の全てを不要とすることができます
3. 電磁的記録の改ざん等の隠ぺい又は仮装があった場合、重加算税が+10%加重されます
※1 対象資産の取得価額の合計300億円が限度となります。
※2 税額控除の場合、グループ外の事業者とデータ連携する場合は、控除率は5%となります。また、控除限度額としては、カーボンニュートラル投資促進税制の税額控除額との合計で法人税額×20%が限度となります。
※1 対象資産の取得価額の合計500億円が限度となります。
※2 税額控除の場合、温室効果ガスの削減に著しく資するものの控除率は10%となります。また、控除限度額としては、デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の税額控除額との合計で法人税額×20%が限度となります。
1. 総額型と中小企業技術基盤強化税制において、試験研究費の増加割合に応じた税額控除率の見直しがされます
2. 総額型と中小企業技術基盤強化税制における控除上限を、条件を満たせば5%引上げ、最大、法人税額の40%が限度となります
3. オープン・イノベーション型について共同研究・委託研究の相手方の対象範囲の拡充と要件が追加されます
4. 試験研究費の定義の見直しにより、試験研究費のうち、研究開発費として損金経理をした金額で非試験研究用資産(棚卸資産、固定資産及び繰延資産で、事業供用時に試験研究用に供さないもの)の取得価額に含まれるものも対象とされます
(該当例)税務において資産計上される自社利用ソフトウェアに含まれる試験研究費など
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※本記事は、アクタス税理士法人より掲載許可をいただき、同ホームページにて公開されている記事を転載したものです。
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