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COLUMN

2020.10.15富裕層コンサルのイロハ

【事業承継税制(特例)】贈与税の納税猶予と併用する贈与―①

  • 事業承継税制

Q. 贈与税の納税猶予と併用する贈与

贈与税の納税猶予と相続時精算課税の完全併用は平成29年度改正から読みとれますが、実のところ、暦年課税とどちらがよいのでしょうか。


Answer

平成31年度(令和元年度)税制改正により相続時精算課税を併用することが通常になると想定されます。

【解説】
平成31年度税制改正前は贈与税の納税猶予と相続時精算課税の併用はシミュレーションを要すべき事項となっていました。
これは両者が極めて相性が悪いからです。
両者を併用した場合、下記のリスクが想定されます。
①受贈者が贈与者より先に死亡するリスク
②将来の価値下落リスク
この点、贈与税の納税猶予は上記について担保されています。すなわち、
上記①に該当した場合……納税猶予額免除
上記②に該当した場合……業績悪化事由に伴う差額免除制度あり
が制度的に保証されているからです。

精算課税の場合、
上記①に該当した場合……相続人に受贈財産について相続財産に化体
上記②に該当した場合……手当なし
となります。

(参考)
質疑応答事例:相続時精算課税における相続税の納付義務の承継等
〔照会要旨〕
相続時精算課税適用者が特定贈与者よりも先に死亡した場合の相続時精算課税の適用に伴う納税に係る権利義務はどのように承継されるのでしょうか。
〔回答要旨〕

1.特定贈与者の死亡以前にその特定贈与者に係る相続時精算課税適用者が死亡した場合には、その相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含み、その特定贈与者を除きます。)は、その相続時精算課税適用者が有していた相続時精算課税の適用を受けていたことに伴う納税に係る権利又は義務(以下「相続時精算課税の適用に伴う権利義務」といいます。)を承継します。
この場合、相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含み、その特定贈与者を除きます。)が2 人以上いる場合の各相続人が承継する相続時精算課税の適用に伴う権利義務の割合は、民法第900条から第902条まで(法定相続分・代襲相続分・指定相続分)に規定する相続分(その特定贈与者がいないものとして計算した相続分)によります。

2.なお、相続時精算課税適用者の相続人が特定贈与者のみである場合には、相続時精算課税の適用に伴う権利義務はその特定贈与者及び相続時精算課税適用者の民法第889条の規定による後順位の相続人となる者には承継されず消滅することになります。

3.相続時精算課税適用者が死亡した後にその特定贈与者が死亡した場合には、相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含み、その特定贈与者を除きます。)が、その相続時精算課税適用者に代わって、特定贈与者の死亡に係る相続税の申告をすることとなりますが、その申告をするまでは、納付すべき税額が算出されるか、あるいは還付を受けることができる税額が算出されるかが明らかでないことから、相続時精算課税適用者の死亡に係る相続税額の計算においては、この相続時精算課税の適用に伴う納税に係る義務は、当該相続時精算課税適用者の死亡に係る相続税の課税価格の計算上、債務控除の対象とはなりません。
【関係法令通達】
相続税法第21条の17第1項、第3項 相続税法施行令第5条の5第3項、第5条の6 相続税法基本通達21の17-3



平成31年度改正においては、贈与税の納税猶予と相続時精算課税制度の併用について下記の措置が施されました。

【平成31年度改正後 租税特別措置法第70条の7 の13項9 号】

九 第1項の規定の適用を受ける経営承継受贈者が第15項、第16項又は第21項の規定により猶予中贈与税額の全部又は一部の免除を受けた場合において、第1項の規定の適用に係る対象受贈非上場株式等(相続税法第21条の9第3項(第70条の2 の6 第1 項、第70条の2の7 第1 項(第70条の2の8において準用する場合を含む。)又は第70条の3第1項において準用する場合を含む。次号において同じ。)の規定の適用を受けるものに限る。)の贈与者の相続が開始したときは、当該対象非上場株式等のうち当該免除を受けた猶予中贈与税額に対応する部分については、同法第21条の14から第21条の16までの規定は、適用しない。



ここから読みとれることは下記の事項です。
後継者が贈与者より先に死亡した場合は、猶予中贈与税額の全部が免除となり、相続時精算課税のみなし相続規定は適用されないこととなりました。

つまり、贈与税の納税猶予との併用で暦年課税を選択した場合と相続時精算課税を選択した場合で有利・不利を判断する必要はなくなったのです。

株式の全部譲渡等に係る期限確定事由に該当した場合を考えてみましょう。
(新旧)減免規定により猶予中贈与税額の一部について免除を受けた場合です。この場合、免除が受けられなかった部分に該当する箇所は、相続時精算課税のみなし相続規定が適用されることになったのです。

このような制度改正を受けて、租税特別措置法第70条の7の7を適用した場合、減免された課税価格で、贈与者の死亡時にも適用があることになります(注1) 。




(注釈)

(注1)本問は竹内陽一http://takeuchitax.com/archives/411を参照しています。




 次回は、『【事業承継税制(特例)】事業承継税制(特例)と持株会社スキームとの合算形式の検証』をお送りいたします。


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伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。