不動産が資産の大半を占める地主様の場合、相続税額が金融資産では対応できないほど巨額になり、お金での一括納付が不可能というケースがあります。こんなときに使えるのが、延納・物納ですが、平成18年度の改正で、ハードルがぐんと上がってしまいました。
お金ではダメ、延納・物納も使えない・・・そんなときは不動産の売却が一つの選択肢として上がってきます。
相続財産の売却は所得税軽減
収入金額 -( 取得費 + 譲渡費用 )- 特別控除 = 譲渡損益
特例を有効活用できる土地の選択
この取得費加算の特例を有効に活用するためには、以下の点を考慮して、売却する土地の優先順位を決めるのも一つの方法です。
<1> 含み益がある土地に適用する
所得税は「譲渡『益』」に対して課税されるので、いつ売却しても譲渡益の発生しない土地は、取得費加算の適用期限を気にする必要はありません。
<2> 所有期間が短い土地に適用する
不動産の譲渡は分離課税方式が採用されており、所有期間が5年以下の場合、税率は39%(復興特別所得税を除く)と、高く設定されています。
同一年に5年超の長期保有のものとの選択になった場合には、短期所有のものから取得費加算の特例を適用していくことをお薦めします。
<3> 特別控除や他の規定による軽減特例の適用できる土地には使わない
居住用財産を売却したときの3,000万円の特別控除や、収用等により土地建物を売ったときの5,000万円の特別控除のように課税所得をより少なくできる特例を活用できるものは、優先順位を下げましょう。個別の事情はそれぞれ異なっているため、どのような方法が有利であると一概に言うことはできません。
納税資金調達にあたっての留意点
税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。