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COLUMN

2017.12.11税務コンサルのポイント

地主系資産家の節税対策「法人設立」

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 所得税の有効な節税手段として期待されるのが「法人設立」です。
 とりわけ、不動産を多くお持ちの方であれば「不動産管理会社の設立」が一般的です。
 その事業形態には大きく分けて3通りあります。

(1)サブリース(転貸)方式・・・「一括借上」方式


 個人が所有する物件を不動産管理会社に一括して賃貸し、これを会社が第三者に賃貸することによって、その賃料差額の「管理料」を徴収する運営形態です。10%~15%が目安として一般的にいわれます。管理会社が家賃をすべて収益に計上し、個人へは「管理料」を差し引いた「賃借料」を支払います。空室や賃貸トラブル等のリスクは会社が負う形になります。この方式のメリットとしては、後述する管理委託方式よりも高い収益を得ることができる点が挙げられます。ただし、賃借料を毎月一定額にすると、空室が多いときはそのぶん利益が圧迫されるため計画が立てにくくなるというデメリットもあります。


(2)管理委託方式…「仮受金管理」方式


 所有する物件を賃貸する際に、不動産管理会社が賃料の回収、入居募集等を代行して、「管理料」を徴収する運営形態です。空室が出ても、管理手数料は売上に対する一定の割合であるため、管理会社のリスクを少なくできるというメリットがあります。
 その反面、管理すべき部屋数等が多い場合には、事務が煩雑になるというデメリットもあります。また、不動産管理会社は、物件の所有者と不動産管理委託契約を結んでおり、会社が管理業務を行うため、オーナーからは「管理料」が支払われます。手数料は5%~10%が妥当といわれております。今この方式はほとんど流行っておりません。現在流行しているのは(3)の方式です。先述の通り「管理料」が税務上のポイントとなります。
 「管理料」は(1)、(2)いずれの形態でも発生しますが、家賃収入に対して何%に設定するか次第で税務上問題とされることがあります。税務調査のポイントはむしろそこが中心といっても過言ではありません。不動産管理会社が多くの管理料を徴収するほど所得が分散され、節税効果が高まるのが一般的です。多くの場合、(1)サブリース(転貸)方式の方が空室リスクを負う分だけ、(2)管理委託方式よりも高い割合で管理料を設定することができるといわれています。
 もっとも、あくまでも管理実態に見合った割合であるかどうかが争点となるので、一括りに「この形態なら何%ならば大丈夫」と断定することはできません。
 適正とされる管理料より何十%も乖離していれば、当然、否認を受けることになります。過去に裁決裁判例では否認事例について多く掲載されてきています。
 管理料の設定については、必ず専門家と相談して決めるようにして下さい。


(3)不動産所有会社方式


 現在もっとも主流とされる方式です。不動産管理会社が、個人が所有する不動産等を取得したり、賃貸不動産等を建築したりすることで、その物件の管理業務を行う運営形態です。
 つまり、不動産管理会社が、オーナーから不動産を取得し、運営・管理を行うことになります。「土地」は個人所有、建物」は会社所有として、 個人に地代を支払う方法が一番オーソドックスです。
 賃借料は全額会社に入ることになるため、(1)、(2)の方式よりも所得の分散効果が高くなります。この方式をとる場合は、借地権の認定課税を受けないためにも、その土地の固定資産税の2~3倍程度(地域によって異なります)の地代を支払い「土地の無償返還に関する届出書」を所轄税務署長へ提出するといった対策を打っておく必要があります。
 多くの物件を所有する方の場合であれば、物件の収益率等により、上記の方式を物件ごとに上手に組み合わせると、リスクを分散することができ、さらに節税効果が高くなります。

伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。