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COLUMN

2017.10.10税務コンサルのポイント

取引相場のない株式の評価 [平成26年4月1日現在法令等]

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 今回から、純資産のほとんどが自社株式である企業オーナー系の資産家について考えます。
 まずは、自社株式(取引相場のない株式)の評価方法をきちんと把握しましょう。

 取引相場のない株式(上場株式、登録銘柄、店頭管理銘柄及び公開途上にある株式以外の株式をいいます。)は、相続や贈与などで株式を取得した株主が、その株式を発行した会社の経営支配力を持っている同族株主か、それ以外の株主等かの区分により、それぞれ原則的評価方式又は特例的な評価方式の配当還元方式により評価します。

1. 原則的評価方式


 原則的評価方式は、評価する株式を発行した会社を従業員数、総資産価額及び売上高により大会社、中会社又は小会社のいずれかに区分して、原則として次のような方法で評価をすることになっています。

(1) 大会社
 大会社は、原則として、類似業種比準方式により評価します。類似業種比準方式は、類似業種の株価を基に、評価する会社の一株当たりの配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の三つで比準して評価する方法です。
 なお、類似業種の業種目及び業種目別株価などは、国税庁ホームページで閲覧できます。

(2) 小会社
 小会社は、原則として、純資産価額方式によって評価します。純資産価額方式は、会社の総資産や負債を原則として相続税の評価に洗い替えて、その評価した総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税額等相当額を差し引いた残りの金額により評価する方法です。

(3) 中会社
 中会社は、大会社と小会社の評価方法を併用して評価します。


2. 特例的な評価方式


 取引相場のない株式は、原則として、以上のような方式により評価しますが、同族株主以外の株主等が取得した株式については、その株式の発行会社の規模にかかわらず原則的評価方式に代えて特例的な評価方式の配当還元方式で評価します。配当還元方式は、その株式を所有することによって受け取る一年間の配当金額を、一定の利率(10%)で還元して元本である株式の価額を評価する方法です。


3. 特定の評価会社の株式の評価


 次のような特定の評価会社の株式は、原則として、(1)~(5)については純資産価額方式により、(6)については清算分配見込額により評価することになっています。
 なお、(1)~(4)の会社の株式を取得した同族株主以外の株主等については、特例的な評価方式である配当還元方式により評価することもできます。
 

(1)類似業種比準方式で評価する場合の3つの比準要素である配当金額、利益金額及び簿価純資産価額のうち直前期末の要素のいずれか2つがゼロであり、かつ、直前々期末の要素のいずれか2つ以上がゼロである会社(比準要素数1の会社)


(2)総資産価額中に占める株式や出資の価額の合計額の割合が一定の割合以上の会社(株式保有特定会社)


(3)総資産価額中に占める土地などの価額の合計額の割合が一定の割合以上の会社(土地保有特定会社)


(4)課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)において開業後の経過年数が3年未満の会社や、類似業種比準方式で評価する場合の3つの比準要素である配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の直前期末の要素がいずれもゼロである会社(開業後3年未満の会社等)


(5)開業前又は休業中の会社


(6)清算中の会社


 以上それぞれの評価方法に応じて、この取引相場のない株式の評価をするときには、「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」を使用していただければ比較的容易に株価の計算ができるようになっています。
(評基通178~180、185、188、188-2、189~189-6)
(国税庁ホームページ タックスアンサー No.4638より)

伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。