4 組織再編成
※以下においてはグループ法人税制の適用を除外して解説しています。
※厳密には税務仕訳上「みなし配当」の変動を考慮する点が多々あります。
(1) パターン別株主間贈与
実務上稀なケースがほとんどであるため、ほぼ結論だけを述べるにとどまります。
なお、合併比率及び株式交換比率は実務上、「法人税基本通達9-1-14」で算定した金額、あるいは「時価純資産価額」で算定した金額のいずれかになります。ダンピング幅についても自己株式の低額譲渡で説明したものと全く同様です。
しかし、上記は原則的な考え方です。東京地裁平成19年1月31日判示によると、複数の会計専門家により算出されたDCF 法等の基準を容認しているように思えます。複数の会計専門家が算定したものであれば税務上も認められると思慮します。
① 被合併法人の株主による区分
1)被合併法人の株主にとって有利な合併比率である非適格合併で法人⇒法人への株主間贈与
課税上の問題は、特段生じません。
2)被合併法人の株主にとって有利な合併比率である非適格合併で法人⇒個人への株主間贈与
課税上の問題は、特段生じません。
3)被合併法人の株主にとって有利な合併比率である非適格合併で個人⇒個人への株主間贈与
(イ)合併法人の株主
課税上の問題は、特段生じません。
(ロ)被合併法人の株主
相続税基本通達9-4 より合併法人株主⇒被合併法人株主に贈与が生じると考えられます。
(ハ)被合併法人の株主にとって有利な合併比率である適格合併で法人⇒法人への株主間贈与
課税上の問題は、特に生じません。
(ニ)被合併法人の株主にとって有利な合併比率である適格合併で法人⇒個人への株主間贈与
課税上の問題は、特に生じません。
(ホ)被合併法人の株主にとって有利な合併比率である適格合併で個人⇒個人への株主間贈与(個人、個人が親族関係)被合併法人の株主に有利な場合
㋑合併法人の個人株主
課税上の問題は特に生じません。
㋺被合併法人の個人株主
相続税基本通達9-4 に従い、合併法人の個人株主から被合併法人の個人株主へ贈与が生じます。
1)合併法人株主にとって有利な合併比率である非適格合併で法人⇒法人への株主間贈与
(イ)合併法人の法人株主
課税上の問題は、特段生じません。
(ロ)被合併法人の法人株主
合併法人から被合併法人に移転した合併対価資産が過少です。したがって、合併法人では受贈益課税、被合併法人では寄付金課税がなされます。
2)合併法人の株主にとって有利な合併比率である非適格合併で個人⇒法人への株主間贈与
課税上の問題は、特に生じません。
3)合併法人の株主にとって有利な合併比率である非適格合併で個人⇒個人への株主間贈与(個人、個人が親族関係の場合)
(イ)合併法人の個人株主
相続税基本通達9-2により被合併法人の個人株主から合併法人の個人株主へ贈与税が生じます。
(ロ)被合併法人の個人株主
課税上の問題は特に生じません。
4)合併法人の株主にとって有利な合併比率である適格合併で法人⇒法人への株主間贈与
課税上の問題は特に生じません。
5)合併法人の株主にとって有利な合併比率である適格合併で個人⇒法人への株主間贈与
課税上の問題は特に生じません。
6)合併法人の株主にとって有利な合併比率である適格合併で個人⇒個人への株主間贈与(個人、個人が親族関係)合併法人の個人株主に有利な場合
(イ)合併法人の個人株主
相続税基本通達9-4 に従い、被合併法人の個人株主から合併法人の個人株主へ贈与が生じます。
(ロ)被合併法人の個人株主
課税上の問題は特に生じません。
他に分割型分割、株式交換でも有利な交換比率の論点はありますが、実務上遭遇することは極めて稀なため、説明は割愛します。
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税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。