本コラムは、当社「日税主催研修」「日税オンデマンド」でも講師としてご活躍いただいている(株)事業パートナーの代表取締役社長・松本光輝先生に、300社を超える会社の再生の成功体験をもとに、金融機関交渉に関してQ&A形式でまとめて頂きました。この情報が関与先様へのアドバイスの一助となれば幸いです。
■現状創業50年以上経つトラック運送業の経営者からの相談。
現社長は三代目。一時は赤字決算になったこともあったが、業績は前期が最高で、ここ数年はたっぷり税金を払っている。受注の8割は固定の仕事で、2~3割はスポットを受注、20人程度の従業員がおり、そこそこな規模。これからの五年で、社屋を立て直し、流通加工的なことを始めようと考えている。相続対策はしておらず、子供はいないので、四人兄弟の姉の子供を養子にもらいたいと考えている。
■相談点将来的な事業の継続を考えて、後継者問題や相続の問題を整理しておきたい。
■アドバイス後継者育成には10年かかる。運送業だけ見ていると環境の変化に対応できない。後継者にするなら、異業種の方が良い。色々な業種を経験させて、経営者として、何をすべきかを学ばせる。
親族だけでなく、事業を継続させるためには従業員も視野に入れた方が良い。従業員の中に後継者がいないのであれば、株は自身で持っておいて、経営者だけ契約で採用する方法もある。ただし、人間を見るのには4~5年はかかる。売上のラインを決めて、到達しなければ契約を解除する方法もある。後継者に譲ってダメになるよりも、経営者を雇って代表取締役社長にした方が良い。借金を背負わないのであればやりたい人はいる。
社長は55歳ぐらいでリタイヤして、経営者を雇うというゴールをイメージする。自分は会長を三年やって、「この経営者で大丈夫」と判断したら、株主として配当を貰う。リタイヤするまでに引継ぎに十分な売上に持っていくことだ。
一年かがりで自らの業務を精査し、社長の業務の可視化が必要。これを元に承継を行う。特に「利益が出る原因は何か?」これを見つけることが大切。経営者の仕事をすべて書き出し、部門毎やヒト・モノ・カネに分類して小分けする。例えば10個に分けて、スケジュールと順列を決め、5年間ぐらいのスケジュールを立てる。躓くのは頭の中でゴッチャになっているからだ。自分の仕事をしながらやろうとしてもできないので、誰かにまとめてもらう。一年かけて頭にあるものを明確にして分類、マトリックス化等で可視化する。
役員をされている奥さんは雇った経営者の成績をチェックし、数人の従業員に経営者の仕事ぶりについてヒアリングを行う。会社の利益を安定的に上げていくために、経営ノウハウのあるコンサル会社と組むのも一つの手だ。奥さんがボケそうなら、株を信託して、経営者と話のできる信頼のできる人に依頼する。
雇われた経営者は会社の利益を上げるだけで、社長個人の利益については責任の範疇外であるので、社長個人の相談に乗ってくれるアドバイザリーボードを身の回りに一人か二人持っておくこと。例えばHPを制作するのに誰に頼めばよいのか分からない場合も、そのようなラインを持っているところをパートナーとする。
遺産は、両親が既に死亡しているために奥さんと兄弟に行く。兄弟には遺留分がないので、遺言で奥さんに全部残すこともできる。相続税は3,600万円の控除なので、個人で財産と土地を持っていると相続税がかかる。奥さんが路線価で相続しても、処分するときには取得価格との損益で見られるため、相当な利益が出てしまい、税金が多大になる。自宅であれば3,000万円までの基礎控除があるが、自宅でない相続について無防備すぎるケースが多い。精査した方が良い。
この様なことも含め、経営者はトータルにものを見る視点が必要。
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