資産家の3つのタイプとその特徴
前回の続きからお話します。
(3)企業オーナー系とは? つづき 非上場株式の場合、換金は容易ではありません。多額の相続税負担を要する相続であれば、会社が自社株式を購入すること、会社が借入を行って相続税を支払うこと、銀行借入を行って相続税を支払うことなどが一般的に考慮されるべき納税資金対策となります。当然、これらの方法を複数併用することも考慮すべき事項となります。以上のように①経営権の確保②遺産分割対策③納税資金対策の順に検討すべきです。特に①と②と優先的に検討しなければなりません。相続税対策はその次に行うべきことです。
相続税対策では、自社株対策が極めて効果的な節税方法になります。株式の価値に比較して相続税評価額は往々にして下がるからです。つまり自社株式の評価引き下げによる節税対策は非常に有効に機能します。価値の高い財産を少ない相続税負担で承継することが可能となります。
(4)地主系とは? 我が国の富裕層では、高度成長期からバブル期にかけて不動産で財産をなした方が多いです。しかし長引くデフレにより不動産価格は相当程度下落し含み損を抱えている方も非常に多いです。こういった方々は固定資産税と相続税の支払に苦労されているのが一般的です。
地主が保有する資産である不動産の特徴は、金融資産家が保有する金融資産と異なり、相続時の遺産分割が大きな問題になることが多いです。総資産に占める不動産比率が高い場合や物納による相続税納付が困難な場合には、納税資金の準備が不可欠を言えるでしょう。
地主の資産承継対策で最も考慮すべきところは何でしょうか。早めに相続税評価額の確認をすることは必須です。不動産、特に土地の評価は、その利用形態、評価する単位、地積、賃貸の有無等のさまざまな要素により個別に事業が異なります。土地家屋調査士、不動産鑑定士等の専門家に現況調査をしておくことをお勧めしましょう。また、その地主様本人のみならず、親族、同族会社等の保有する不動産も含めて不動産の所有形態を考えますが、相続税評価を引き下げるために資産の組換えが必要なるのであれば、売却、買換え、交換、贈与等を検討することが必要になっていきます。代々の地主様の場合、借地人との借地契約があいまいになっているケースが非常に多く見受けられます。この場合、契約内容の確認や地代の見直しを行うとともに、場合によっては、借地権の売買、借地人と共同して売却するなど、資産組換えが必要なる場合もあります。これらの対策はすぐにできるものではありませんので、早期の取り組みが必要になります。近年アベノミクスによる金融緩和政策の結果として土地の価格が上昇してきています。今後もしばらくはこの傾向は続くことでしょう。これにより相続財産の中で不動産が占めるケースが今後更に大きくなることが予想されます。
さらに、不動産の遺産分割問題が生じます。複数の相続人が不動産を分割することができればよいのですが、実際にはそのようなケースはごく少数です。分割することにより不動産の価値が大きく低下してしまうこともあります。不動産の分割はいわゆる「値上げ」と逆行する行為だからです。分割せずに共有という形態で相続するとなれば、今度は売却することが現実的に著しく困難となります。この場合、親族間のトラブルは必須といえるでしょう。相続財産の大部分を占める不動産を相続人の誰かの単独所有としてしまうと、他の相続人の不満を買い、遺留分の問題も発生してしまいます。それだけに不動産は相続争いを招く一番大きな原因となるのです。
上記をまとめると、不動産は遺産分割対策と納税資金対策を先に行うべきものであることがわかります。しかし、相続税対策においては、不動産は非上場株式と同様に評価の引き下げという面で非常に有効な財産となります。賃貸不動産であれば貸家建付地、貸家の評価減をとることにより大幅な評価引き下げが可能になります。また小規模宅地等の評価減を使えば、大幅な節税が可能になります。
(5)まとめ 上記で見てきた資産かタイプ別の資産承継対策をまとめると次のように区分されることになります。
(具体例)
遺産分割対策・・・遺言書の作成(※1)
納税資金対策・・・自社株買い
相続税対策・・・不動産投資