Mizuho Industry Focus vol.220
外食企業の現状と今後の戦略の方向性
2019年10月3日 発行
〈要約〉
○日本の大手外食企業は、人口増加とそれに伴う需要の伸びを背景に、既存店舗での利潤創出とそれを元手とした新規出店のサイクルを回すというモデルを確立し成長を遂げてきた。利潤創出に当たっては、大量仕入によるスケールメリットや人員の大量採用と効率的な育成などの大手の強みを活かしたバリューチェーンの磨き上げを各社各様に行ってきた。また、新規出店に当たっては、多店舗展開を行う中で蓄積された出店ノウハウや資本力などの強みを活かして店舗戦略を実行してきた。
○しかしながら、人口減少等を背景とした外食市場規模の縮小や人件費を始めとする諸コストの上昇等の事業環境の変化により、外食企業が有する既存のバリューチェーンに機能低下が生じつつある。
○加えて、足下では外食企業の店舗価値提供機会を減少させるプレーヤー(非外食企業)の台頭が散見される。具体的には、出前代行業者の台頭により、外食企業の出店ノウハウや店舗オペレーションのための人員採用、育成などの強みが発揮されづらい事態が見受けられる。また、中食(持帰り)事業者の台頭により、食の外部化需要が中食に流出しつつある。
○ このような状況を踏まえ、外食企業の今後の戦略について 2 点を提言する。
○ 1点目は、事業環境変化による外食企業の既存バリューチェーンの機能低下という課題への対応として、バリューチェーンの再構築について論じる。外食各社の自己完結型のバリューチェーンのうち協調領域、競争領域を整理した上で、協調領域においては協業によるコスト削減や店舗外工程の持続性を高めつつ、競争領域においては顧客の店舗体験分野に十分な経営資源投下を行えるモデルを提示する。
○2 点目は、外食企業の店舗価値提供機会の減少を受けて、今後の成長の方向性として事業領域の拡張について論じる。外食企業が自らのコアコンピタンスを活かしつつ、顧客の日常生活との繋がりを強めることにより、店舗を中心としつつ店舗外での顧客体験も創出することを提示する。
※本記事は、みずほ銀行より掲載許可をいただき、同行ホームページで公開されている記事を転載したものです。
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