二十二 評価損
(間違えやすい事例)
○評価損が計上できる特定の事実に該当しているのに、評価損を否認しているもの(令68、基通9-1-4ほか)。
○非上場の企業支配株式について、評価換えの時における発行法人の資産状況等の検討をせずに、企業支配株式であるという理由のみで評価損の計上を否認しているもの(令68①ニロ、基通9-1-9、9-1-11、9-1-12)
☆○ゴルフクラブ入会金等(株式又は出資金のものを除きます。)を有価証券に該当するものとして、その評価損を計上した法人の処理をそのまま認めているもの(法2二十一、令11)。
☆○株式分割(いわゆる無償増資)等により新株権利落ちのあった上場株式について評価損を計上する場合において、当期末までに、まだ新株の発行がされていないものの価額は、当該株式の最終価格に当該株式の権利の価格に相当する金額を加算した金額と帳簿価額とを比較すべきであるのに、当該権利調整を行っていないために評価損が過大に計上されているもの(基通2-3-34、9-1-8)
○補修用部品在庫調整勘定の繰入れにおいて、既に前期で保有期間の年数が経過してしまった部品について繰入れを行っている法人計算をそのまま認めているもの(基通9-1-6の2)。
○株式発行法人の増資に係る新株を引き受けて払込みをした直後、評価損の計上をした法人の計算を検討せずにそのまま認めているもの(基通9-1-12)。
○非上場株式の発行法人の純資産価額については、増資又は減資後の1株当たりの純資産価額を修正しなければならないが、貸借対照表上の純資産価額を基に基通9-1-9(2)の発行法人の資産状態を判定しているもの(基通9-1-9(注))。
○法人が計上した上場株式に係る有価証券評価損について、事業年度終了後にその上場株式の株価が上昇していることのみをもって、その上場株式の有価証券評価損を否認しているもの。上場有価証券が近い将来その価額の回復が見込まれるかどうかの判断は、事業年度終了の時に行うのであるから(基通9-1-7(注)2)、その後の株価の上昇により左右されるものではありません。
☆○ゴルフ会員権に係る評価損等について、その適否を検討せず、法人の処理をそのまま認めているもの。
○預託金方式のゴルフ会員権が株式方式に転換された場合、従来の施設利用権が消滅していないときは、転換前の当該会員権の帳簿価額の全額が有価証券の取得価額を構成するにもかかわらず、転換前の帳薄価額のうち、入会金・プレミアム相当金額について、損金の額に算入しているもの(令119①二)。
(注)預託金のうち、一部切捨てのあった場合の当該切捨てられた部分の金額は、損金の額に算入することができます。
○内国法人と完全支配関係がある他の内国法人で清算中のもの、解散をすることが見込まれるもの及び完全支配関係がある他の内国法人との間で適格合併を行うことが見込まれるものの株式又は出資を有する場合におけるその株式又は出資について評価損を認めているもの(法33⑤、令68の3)。
二十三 支払損害賠償金
(間違えやすい事例)
○自動車人身事故に係る損害賠償金は、示談の成立等により確定する前に、その支出の日の属する事業年度の損金の額に算入した場合には、その損金の額に算入した損害賠償金の額に達するまでの金額の保険金(保険会社に対して保険金の支払を請求しようとする額を限度とします。)を益金の額に算入することとされているのに、これによっていないもの(基通9-7-18)。
○クレームとして支払う金額を期末までに相手方に申し出ているにもかかわらず、債務が未確定であるとして未払計上を否認しているもの(基通2-2-13)。
二十四 その他の損金
(間違えやすい事例)
○換地処分等に伴い支出した清算金は土地勘定に加算すべきであるのに、その損金算入をした法人計算を認めているもの(措法65②二)。
○障害者雇用納付金申告書が翌期に提出されているのにもかかわらず、当期に障害者雇用納付金の未払計上を行っている法人の処理をそのまま認めているもの(基通9-5・7(3))。
☆○前払費用の額でその支払った日から1年以内に役務の提供を受けるものについて、法人が継続して支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、この処理が認められるのに、翌期の費用であるとして否認しているもの(基通2-2-14〉。
○法人が一時の損金としたシンジケートローン契約に係るアレンジメントフィーにつき、支出の効果が1年以上であることのみをもって繰延資産として否認しているもの
一時の損金となる場合もありますから、その契約書等の内容をよく確認し、契約内容等に即して、その是否を判断する必要があります。
(注)上記シンジケートローン契約に係るマネージメントフィーは期間対応する費用であり、一時の損金とはならないため、アレンジメントフイーとマネージメントフィーが区分されていない場合には、期問対応費用として取り扱うこととなります。
以上で[別表四]については終わりです。
次回からまた別のテーマでお送りします。
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税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。