働き方の多様化と働き方改革を後押しする観点から、2018年の所得税改正において、給与所得に適用される「給与所得控除額を一律10万円引き下げ」、どのような所得にでも適用される「基礎控除額を10万円引き上げる」ことになりました。改正の適用は2020年1月1日からとなりますが、2019年分の年末調整にも影響があり、その内容を確認していきます。
■2019年分の年末調整のポイント
2019年の年末調整では、2020年(令和2年)分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書について記載の変更と追加点があります。
1.配偶者や扶養親族の「所得の見積額」の変更
扶養控除等申告書は、年末調整時に当年分と翌年分を従業員に渡します。翌年(2020年)分は、改正により判定基準の見直しが行われたため、配偶者や扶養親族の2020年分の「所得の見積額」を記載する際に10万円引き上がることを周知しておくことが重要です。(次頁4.参照)
2.単身児童扶養者の欄が追加
扶養控除等申告書の一番下の欄に「単身児童扶養者」の欄が追加されました。児童扶養手当を受給している単身の親で、その年分の合計所得金額が135万円以下の場合に、2021年(令和3年)より住民税が非課税となります。(次頁Q&A Q3.参照)
■2020年1月から適用される所得税改正の内容
1.給与所得控除の引き下げ
給与所得控除額が一律10万円引き下げられます。さらに給与等の収入金額(年収)が850万円を超えた場合、給与所得控除は上限金額195万円(2019年の上限は、収入金額1,000万円、給与所得控除220万円)となります。2020年からは年収850万円を超える個人について、増税となります。
2.基礎控除の引き上げ
基礎控除額は一律10万円引き上げられます。ただし、合計所得金額が2,400万円を超える個人については段階的に控除額が減少し2,500万円超で基礎控除の適用がなしになります。
3.所得金額調整控除の新設
年収850万円を超える個人は給与所得控除の引き下げにより増税されることになりますが、介護や子育て世帯の負担軽減のため別枠で調整を図る新しい控除の項目が設けられました。この調整に該当する場合、改正前と同じ税負担になるように設計されています。
4.配偶者・扶養親族等の合計所得金額要件の見直し
給与所得控除の引き下げにより、配偶者控除や扶養控除などの所得控除の対象かどうかを判定する合計所得金額の基準が10万円引き上げられます。2020年分からは次の表の金額が判定基準となり、今回の年末調整で翌年分の扶養控除等申告書を記載するときに注意すべき内容になります。
Q&A
Q1.2019年の年末調整の内容で他にも留意しておくべき項目はありますか?
A1.昨年から始まった配偶者控除関係は、納税者本人と配偶者の「両方」の所得の見積額から控除額を計算することになります。配偶者控除等申告書に控除額が一覧表として記載されているので、金額区分を間違わないように注意します。その他iDeCo(イデコ)の掛金を支払っている従業員は、保険料控除申告書に記載し、送られてくる「小規模企業共済等掛金払込証明書」を勤務先に提出します。
Q2.年末調整の実務作業をするにあたり、注意しておくべき点はありますか?
A2.年末調整では、年収が確定していない時期に年末調整書類を提出することになります。所得の見積額の計算が従業員に求められ、計算がわからず、「書類の差し戻し」「計算のやり直し」「書き直し」など訂正のための業務負担が増えることも想定されます。人事部や総務部は、手際よく進められるよう、改正点や計算方法について従業員への周知を丁寧に行うことが大切です。なお、2020年1月の給与計算から、改正内容が反映された源泉徴収税額表での源泉徴収が必要になりますので、その旨も併せて通知しておくといいです。システムを利用する場合は、計算ミス等が大きく減ることになりますが、提出期限をしっかりと守らせることが重要になります。
Q3.単身児童扶養者とは具体的にはどのような人になりますか?
A3.単身児童扶養者とは、受給者本人が、原則としてその年の12月31日の現況で、次の三つの要件のすべてに当てはまる人です。
①児童扶養手当の支給を受けている児童の父または母である者
②現に婚姻(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様にある場合を含む。)をしていない者
または配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の生死が明らかでない者
③児童扶養手当の対象児童の合計所得金額が48万円以下
※本記事は、アクタス税理士法人より掲載許可をいただき、同ホームページにて公開されている記事を転載したものです。
https://www.actus.co.jp/library/knowledge/list.shtml
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