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COLUMN

2017.07.10税務コンサルのポイント

相続税の税務調査 その2

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2.相続税の税務調査の下準備 前編(税務署の事前情報収集) つづき


 また、通常、相続税の申告書(用紙)や相続税のお尋ねは、相続税の申告期限の2ヶ月から3ヶ月前に送られてきます。相続税の申告期限間近になって慌てないように、相続財産はどのようなものがいくらくらいあり、相続税がかかるのかどうか程度は生前に必ず把握しておきましょう。
 もう一点、最近の傾向として非常に重要なこととして認識したいことがあります。上述の相続税申告書(用紙)や相続税のお尋ねが税務署から送付されるのは、あくまでも税務行政としてのサービスであり、本来は自分で相続税の申告が必要か不要かを判断しなければならない、という点です。「送付されなかったから申告しなかった」では済まされないことをしっかりと理解しておいてください。
 ちなみに、この「お尋ね」を無視し続けていると、税務調査に移行することもあります。これは極端な事例ですが、その調査日程の連絡まで無視すると、税務職員が自宅に突然やってきた、ということも過去にあったようです。


3.相続税の税務調査の下準備 後編(税務署の事後情報収集)


 相続人から提出された相続税の申告書を基に、どの相続人がどの財産を取得したのかなどを整理し、データとして管理していきます。特に相続財産が多額になりますと相続税も高額になるため、情報収集やデータ管理など税務署内部でも慎重な対応が行われます。
 相続財産の申告漏れとして最も多く指摘されるのが預貯金です。相続税の税務調査における指摘事項の中で圧倒的多数を占めます。相続税の申告書そのものには預貯金の明細まで添付することはしません。では、税務署はどのようにして預貯金の動きを確認しているのでしょうか。税務署は、相続人等の承諾なく銀行や証券会社などの金融機関へ照会を行うことが可能です。預貯金であれば口座の入出金の明細も入手しています。残高証明や入出金明細の取得は、被相続人名義の口座だけでなく家族名義の口座も入手しているため、親(祖父母)の預金口座から子供(孫)の預金口座へ現金移動もすぐにわかります。また、預金口座から引き出した現金をそのまま自宅の金庫に入れても(いわゆるタンス預金)把握してきます。預金口座における「引き出し」の明細を詳細に確認するからです。多額の現金を引き出したのであれば、その使途は必ず調べられます。もしその使途が不明であればタンス預金をしていると疑われることになります(ですから入院費等で多額の現金引き出しが必要な場合は、領収証等をセットで保管しておくことを強くお勧めします)。
 また、近年では海外に現金を送金する人が増えてきています。日本から海外へ送金をしたとき、又はその逆の場合で、金額が100万円を超えるときは、銀行から税務署へ国外送金の調書が提出されることになっています。海外とのやり取りだからわからないだろう、という安易な考えは大きな間違いです。また、税務署等当局はこういった海外送金による資産隠し(キャピタルフライトと言われます)を調査する専門の部署を設けています。
 ここまでで、税務署側の収集した情報と申告書とに大きな食い違いがあれば準備調査に着手します。食い違いが大きい、又は不審な点があれば、金額にかかわらず税務調査はやってくると思っていただいて結構です。
 冒頭で「今更!?」と思う時期に税務調査がやってくる理由は、遺族の悲しみが癒えるのを待つという建前論もありますが、税務署側の周到な事前準備期間でもあるのです。

伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。