1. はじめに
平成30年度民法改正により、「特別寄与料」制度が創設されました(民法1050条)。これを受け、平成31年度税制改正において、相続税における特別寄与料の取り扱い方法が明示されることとなりました(特別寄与料の取り扱いは、令和元年7月1日以後に発生した相続について適用)。
本稿においては、特別寄与料制度の概要について整理いたします。
2.寄与分
従来の民法にも規定のあった「寄与分」制度とは、「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付」、「被相続人の療養看護」等により「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与」をした相続人がいる場合に、寄与の程度等に応じて相続分を超える財産を取得させようとする制度です(民法904条の2)。
この従来の寄与分制度においては、寄与分を受けることができる対象が相続人に限られていました。そのため、例えば、被相続人の子の配偶者が、被相続人の看護を長年行っていた場合において、子の配偶者は相続人でないため寄与分の恩恵を受けることができないという点が問題視されていました。
3. 特別寄与分
改正民法により規定された「特別寄与料」制度では、「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供」を行ったことにより「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与」をした親族(相続人等を除く)がいる場合には、その親族に、寄与に応じた額の金銭である「特別寄与料」の請求権を認めています(民法1050条)。
なお、親族とは6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族をいい、子の配偶者はこの中に含まれます。
この特別寄与料制度の創設により、相続人でない親族が被相続人の看護を長年行っていた場合などに、相続の際にその親族が相続分を超える金銭を取得することができることとなりました。
4.寄与・特別寄与の認定
そもそも民法においては、親族間における扶養義務(民法730条)と夫婦の相互扶助義務(民法752条)が定められています。寄与分又は特別寄与料が認められるためには、これらの通常の身分関係による義務の範囲を超えた「特別の寄与」を行っていることが前提となります。
寄与の形態には様々ありますが、実務上、療養看護に関しての寄与度の認定の目安として、要介護2程度以上であることが必要とされています。これは、要介護2の段階では、日常の動作部分についても介護が必要となるためです。
【参考】 要介護状態: 身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、原則6か月以上にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態。 要介護2: 日常生活動作についても部分的な介護が必要となる状態。歩行や起き上がりなど起居動作がひとりでできないことが多く、食事、着替えは何とか自分でできるが、排せつは一部手助けが必要な状態であり、部分的な介護が必要な状態。 |
【前提】 ・課税資産3億円 ・法定相続人:2名(子A、子B) ・法定相続分で分割(特別寄与料を除く) |
息子の会社で融資を受けるにはどうしたら良いか。【金融機関交渉Q&A vol.42】 | 「延納」「物納」の検討のポイント | 親族内外、複雑な承継もお手伝いします - 事業承継支援サービス |
ひのき共同税務会計事務所/芝オフィス代表 税理士平成13年早稲田大学社会科学部卒。デロイトトーマツ税理士法人、太陽グラントソントン税理士法人を経て現職。国内上場企業及び外資系企業に対する税務申告業務から、連結納税コンサルティング業務、事業再編・M&Aに係る税務精査業務、ストラクチャー検討業務、オーナー企業に対する事業承継支援業務などに従事。著書に「中小・オーナー企業の国際税務」(中央経済社)、「第6版 詳解 連結納税Q&A」(共著・清文社)がある。