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COLUMN

2019.07.18税務コンサルのポイント

[別表四]各論編③~棚卸資産~

  • 富裕層コンサルのイロハ
  • 法人税

二 棚卸資産
1 取得価額
(間違えやすい事例)
○販売所等から販売所等へ移管するために要した運賃又は荷造費等の費用の額の合計額が仕入代価のおおむね3%以内であるため、損金算入が認められるにもかかわらず否認しているもの(基通5-1-1)。
○各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ経常的に消費される事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品等の取得に要した費用の額は、継続してその取得した日の属する事業年度の損金の額に算入している場合にはこれを認めることとなっているのに、当該消耗品等の期末未使用残高を棚卸計上もれとして否認しているもの(基通2-2-15)。
○法人は棚卸資産の取得価額に借入金の利子の額を算入していないのに、ユーザンス金利を棚卸資産の取得価額に算入すべきものとして否認しているもの(基通5-1-1の2(6))。
○未成工事支出金中の使途不明金について、加算(流出)、減算(留保)の両建ての処理をしていないもの。
(注)使途不明金を支出した事業年度において上記の処理をすることにより、法人が完成工事原価に振り替えたときは、その振り替えた事業年度においてその金額の損金算入が否認されることとなります。
○建設業者等における共同企業体方式による請負工事等において、その幹事会社が収受する特別な利益(いわゆるスポンサーメリット)のうち、機械損料差額及び人件費差額等については未成工事支出金を減額等する処理が認められるにもかかわらず、益金計上もれとして更正しているもの。
(注)材料納入業者、外注先等からの現金による割戻し又は値引き等のスポンサーメリッ 卜については、現実に収受した時の益金としている場合は、その処理も認められます。
○建設業者等の事業の用に供する金属造りの移動性仮設建物の取得価額には、当該建物の組立て及び撤去に要する費用並びに電気配線等で他に転用することができないと認められるものの費用は含めないことができるのに、これらの費用を取得価額に加算しているもの(基通2-2-8(注))。


2 評価方法
(間違えやすい事例)
○売価通元法における差益率の計算において、原価に前期の税務否認額の当期認容分(当期の売上原価となるものに限る。)を加算していないもの(令28①一へ)。
○法人が売価還元法によっている場合の計上もれの棚卸資産の評価において、棚卸資産の計上もれがあれば売価還元率も変わってくるのに、法人計算の売価還元率をそのまま用いて評価しているもの(令28①一へ)。
○売価還元法により評価額を計算する場合の期中に販売した棚卸資産の対価の総額(実際の販売価額の合計額)に、特定の者に対する値引き以外の一般の値引きを加算して計算をしているもの(基通5-2-6)。
○法人が選定した評価方法により評価しなかったことのみをもって、法定評価方法である最終社入原価法により算出した取得価額による原価法により評価し直しているもの(令31②)。

(解説)
平成23年度税制改正により、棚卸資産の評価.について、低価法のうちいわゆる切放し低価法が廃止されました(旧令28②)。

(適用関係)
平成23年3月31日以前に開始した事業年度(同年4月1日以後に開始し、かつ、同年6月30日前に終了する事業年度を含む。)における期末棚卸資産の評価額の計算については、従来どおりとなります。
なお、平成23年4月1日以後に開始し、かつ、同年6月30日以後最初に終了する事業年度の直前の事業年度において切放し低価法の規定の適用を受けていた棚卸資産の同年4月1日以後に開始する各事業年度(同年6月30日前に終了する事業年度を除きます。)終了の時における評価額の計算については、当該棚卸資産は、その法人が当該棚卸資産を当該直前の事業年度終了の時における評価額により取得したものとみなされます(平23令附則5②)。


3 原価差額
(間違えやすい事例)
○販売のために製造した機械についてのみ原価差額の調整をし自己が使用するために製造した機械については原価差額の調整を行っていない法人計算をそのまま認めているもの(基通7-3-17)。
○調整すべき原価差額の算出に当たり、その原価差額に係る税務否認額を控除していないもの。
○前期の材料計上もれ又は評価減否認のうち、当期において認容されるものは、当期の原価差額とすべきであるのに、これによっていないもの。
○原価差額が少額(総製造費用のおおむね1%以内)である場合には、原価差額の調整を行わないことができるものとされているのに、それを否認しているもの(基通5-3-3)。
○原価差額の調整における1%以内の判定は、調査により把握した原価差額により判断すベきであるのに、確定申告においてすでに調整されている原価差額を含めて1%以上になるとして否認しているもの。
○一括調整した場合は、前期否認した評価減分を全額認容し、当期分の原価差額のみを調整すべきであるのに、前期末の棚卸資産に配賦した原価差額を含めて調整しているもの(基通5-3-7)。
○製造原価について税務否認をしたことに伴い発生した貸方原価差額(原価差益)について、これを認容しているもの(基通5-3-9)。
○貸方原価差額を申告調整している場合に、売上原価認容に伴う貸方原価差額の申告調整額を否認していないも
の。


4 期末棚卸高
(間違えやすい事例)
○商品等の受払簿の期末残高がマイナスの場合において、マイナスの生じた原因を調査しないで、単に不合理であるとしてマイナスの金額をそのまま棚卸計上もれとしているもの。


5 売上原価の算定
(間違えやすい事例)
☆○部分納入等のため原価が未確定な場合において、法人が適正に原価を見積っているときは、その見積額と実際額との差額は、その額が具体的に確定した日の属する事業年度の損益とすることとなっているのに、その見積計算を否認しているもの(基通5-1-2、2-2-1)。
○不動産業者が造成団地売出しのために設置した野立看板で分譲後撤去されるものは、譲渡原価に算入できるのに、これを構築物計上もれとして否認しているもの(令32①ニロ)。
○分譲地の譲渡価額を計算する場合において、分譲完了後地方公共団体等に寄附することを予定している道路敷地部分の額のうち、期中に分譲した土地に対応する部分は、その分譲した土地の譲渡原価に算入すべきであるのに、これを社有地の計上もれとして否認しているもの(基通2-2-3)。




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伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。