1. はじめに
相続税対策に「養子縁組」が効果的であるということを耳にしたことがある方は多いと思います。しかしながら、養子縁組の制度や効果を正しく理解せずに行った場合、結果としてトラブルに結びついてしまうことも多々あります。本稿においては、養子縁組を行った場合の相続に対する影響をまとめてみたいと思います。
2. 養子縁組とは何か
養子は、縁組の日から、養親の嫡出子(法律上の婚姻関係にある男女を父母として生まれた子)の身分を取得することとなります(民法第809条)。
養子縁組には、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があります。
普通養子縁組は、実方(養子からみて、自分の自然血族関係にある親族)の父母との親族関係が維持されますが、特別養子縁組は、実方の父母との親族関係が終了することとなります。そのため、特別養子は実方の父母に相続が発生した場合に、相続権がないことに注意が必要です。特別養子縁組は虐待などから子供を守るための制度であり、通常、相続対策の局面では普通養子縁組が利用されます。
普通養子縁組 | 特別養子縁組 | |
---|---|---|
実方の父母との 親子関係 | 維持される | 終了する |
養親の要件 | 成年に達した者 | 25歳に達している者で配偶者のある者 |
養子の要件 | 養親の尊属及び年長者は不可 | 原則は6歳未満の者 但し、その者が8歳未満であって6歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合は除く |
父母等の同意 | 養子となる者が15歳未満の場合は、法定代理人が縁組の承諾をする | 父母の同意が必要 |
手続き | 原則は当事者の届け出のみ 未成年者を養子とする場合には、家庭裁判所の許可が必要 | 父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、家庭裁判所がこれを成立させる |
離縁 | 縁組の当事者の協議により離縁をすることができる | 養子の利益のため特に必要があると認めるときに、家庭裁判所が、養子、実父母、検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる |
遺産に係る基礎控除額=3,000万円+法定相続人の数×600万円
【相続人の人数に加算される養子の人数】
・被相続人に実子がある場合、又は、被相続人に実子がなく養子の数が1人の場合・・・・・・・1人
・被相続人に実子がなく養子の数が2人以上ある場合・・・・2人
死亡保険金の非課税限度額=法定相続人の数×500万円
死亡退職金の非課税限度額=法定相続人の数×500万円
【前提】
・課税資産3億円 ・法定相続人:実子2人
3億円-(3,000万円+法定相続人2人×600万円)=2億5,800万円
B) 各人の法定相続分に応じた取得金額とその相続税額子1名あたり 2億5,800万円×1/2=1億2,900万円
→ 1億2,900万円×40%-1,700万円=3,460万円
3,460万円×2人=6,920万円
3億円-(3,000万円+法定相続人3人×600万円)=2億5,200万円
B) 各人の法定相続分に応じた取得金額とその相続税額子1名あたり 2億5,200万円×1/3=8,400万円
→ 8,400万円×30%-700万円=1,820万円
1,820万円×3人=5,460万円
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ひのき共同税務会計事務所/芝オフィス代表 税理士平成13年早稲田大学社会科学部卒。デロイトトーマツ税理士法人、太陽グラントソントン税理士法人を経て現職。国内上場企業及び外資系企業に対する税務申告業務から、連結納税コンサルティング業務、事業再編・M&Aに係る税務精査業務、ストラクチャー検討業務、オーナー企業に対する事業承継支援業務などに従事。著書に「中小・オーナー企業の国際税務」(中央経済社)、「第6版 詳解 連結納税Q&A」(共著・清文社)がある。