MENU MENU

COLUMN

2019.07.04税務コンサルのポイント

[別表四]各論編②~工事の請負~

  • 富裕層コンサルのイロハ
  • 法人税

一 長期割賦販売等、工事等の損益 つづき
2 工事の請負
(間違えやすい事例)
○工事進行基準を適用した工事に係る原価の中に資本的支出があったため、これを否認した場合は、その工事に係る利益の額も異動するのに、これを利益の額の計算に関係させていないもの(令129③)。
○法人が工事進行基準の適用において、工事原価を適正に見積り、今後要する費用の一部を予備費用として計上しているのに、その予備費用を単なる引当てとして否認しているもの。(注)工事進行基準の適用における工事原価は、各事業年度末における現況で適正に見積ることとされています(令129③)。
○一の契約により同種の建設工事等を多量に請け負ったような場合であっても、その引渡量に従い工事代金を収入する旨の特約又は慣習がない場合は、部分完成基準を適用することができないのに、当該基準により工事利益を計上すべきであるとして否認しているもの(基通2-1-9)。
○ソフトウェアの製作等の役務の提供のみを請け負った場合には、法人税法第64条の工事進行基準に規定する工事の請負には該当しないにもかかわらず、工事進行基準の適用を認めているもの(平20年課法2-5による改正前の旧基通2-4-12)。

(解説)
 平成20年度税制改正により、平成20年4月1日以後に開始する事業年度において着手する工事について、次の点が改正されました。

(1)制度の対象となる工事の請負の範囲の拡充
 工事の請負の範囲にソフトウェアの開発の請負が追加されました(法64①、令129①)。

(2)長期大規模工事の請負に係る特例の見直し
①長期大規模工事の要件のうち、工事期間要件が2年以上から1年以上に、請負金額要件が50億円以上から10億円以上に、それぞれ見直されました(法64①、令129①)。

②工事進行基準の方法による経理を行っていなかった工事が、着手した事業年度後の事業年度においてその対価の額の引上げ等の事由により長期大規模工事に該当することとなった場合には、それ以後は工事進行基準の方法により収益及び費用を計上することとなりますが、選択により、既往事業年度分の収益の額の計上を完成引渡しの時まで繰り延べることができるとされている特例が設けられています(令129⑤)。
 この特例に関して、法人が既往事業年度分の収益の額及び費用の額につき、工事進行基準の方法により経理した場合又はこの特例を受けなかった場合には、その経理した決算に係る事業年度又はその適用を受けなかった事業年度以後の事業年度についでは、この特例の適用ができないとされました(令129⑤ただし書)。

③長期大規模工事については、工事に着手している場合であっても、事業年度終了の時点でその着手の日から6月を経過していないものや進行割合が20%未満となっているものについては、工事進行基準の方法による収益の額及び費用の額をないものとすることができるとされています(令129⑥)。
 この特例に関して、その長期大規模工事の請負に係る収益及び費用の額につき、その確定した決算において工事進行基準の方法により経理した場合には、その経理した事業年度以後の事業年度については、この特例の適用ができないこととされました(令129⑥ただし書)。

(3)長期大規模工事以外の工事の請負に係る措置の見直し
①損失が生ずると見込まれる工事の請負については、工事進行基準の方法を選択して適用することができる工事の請負の範囲から除外されていたが、その除外する措置が廃止されました(法64③)。

②工事の請負の対価の額が確定していない場合の取扱いの規定(令129④)を準用する規定が設けられ、請負の対価の額が確定していない工事については、その工事の請負に係る工事進行基準の方法による収益の額及び費用の額の計算において、その対価の額を見積もられる工事原価の額と同額とみなして取り扱うこととされました(令129⑨)。

③対象となる工事の請負についてその着手の日に対価の額が確定していない場合には、その対価の額が確定した日を着手の日として法人税法第64条第2項の規定を適用することができることとされました(令129⑪)。

④長期大規模工事に係る工事の着手の判定の取扱いの規定(令129⑦)を準用する規定が設けられ、その対象となる工事に着手したか否かは、その請け負った工事の内容を完成するために行う一連の作業のうち重要な部分の作業を開始したかどうかにより判定することとされた上、その工事の設計に関する作業がその工事の重要な部分の作業に該当するか否かは法人の選択によることとされました(令129⑩)。

(4)工事進行基準による未収入金
 工事進行基準により計上される未収入金相当について売掛債権等(売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権をいいます。)に該当することとされました。
 これにより、売掛債権等の帳簿価額とされた金額は、一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の対象となり、税法上も貸倒引当金の計上ができることとなりました(令130)。

(適用関係)
 改正後の規定は、平成20年4月1日以後に開始する事業年度において着手する工事(製造及びソフトウェアの開発を含む。)について適用され、同日前に開始した事業年度において着手した工事については、改正前の規定が適用されます(平20法附則19①)。
 平成20年4月1日から平成21年3月31日までの間に開始する事業年度に着手する工期1年以上2年未満かつ請負対価10億円以上50億円未満である全ての工事について一の工事でも工事進行基準の方法による経理をしていない場合には、その事業年度に着手した全ての工事については改正前の法人税法の規定が適用されます(平20法附則19②)。





あわせて読みたい!
[別表四]各論編①~長期割賦販売等~金融機関交渉Q&A vol.41活用方法のアドバイスも! - 従業員持株会 設立・運営支援サービス


伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。