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COLUMN

2019.06.06税務コンサルのポイント

所得の金額の計算に関する明細書〔申告書別表4〕

  • 富裕層コンサルのイロハ
  • 法人税

 今回より、所得の金額の計算に関する明細書、申告書の別表4に関する留意点について取り上げます。
 初回となる今回は、間違えやすい事例の紹介と検討の仕方を述べていきます。


(間違えやすい事例)

○納税充当金を取り崩して納付した延滞税等について、加算(流出)、減算(留保)の両建処理を省略したため、留保所得が過大に計算されているもの(法2十八、67③)。


○納税充当金の繰入処理をして還付された所得税額等及び欠損金の繰戻しによる還付金額等について、加算(留保)及び減算(流出)の両建処理を省略したため、留保金額が過少に計算されているもの。


○社外流出(配当)欄に記載した金額は、株主資本等変動計算書の剰余金の配当等の金額と一致するにもかかわらず、当期末が基準日の翌期において行われる株主総会の配当決議の金額を記載していたため、留保所得の計算を誤っているもの。


○加算(留保)となる所得金額(未納事業税補てん等)又は減算(流出)すべき所得税額等及び欠損金の繰戻しによる還付金額等を誤ってそれぞれ加算(流出)又は減算(留保)としたため、留保所得の計算を誤っているもの(法67③五、26①、基通16-1-5)。


○利益剰余金を資本に組み入れた場合は、所得金額の計算に関係させないこととなっているのに、第4表(1)において加算(流出)、減算(留保)として処理したため、留保所得の計算を誤っているもの(法67③)。


○所得税額等の還付金が生じた事業年度で、その還付金額を未収入金経理した場合に、申告書、別表4で減算(留保)すべきであるのに減算(流出)の処理をしたため、留保金額が過大に計算されているもの(法67③)。

(注)所得税額等の還付金を受領した事業年度で、その還付金額を減算(流出)することとなります(法26①)。

☆○税効果会計による法人税等調整額は、損益計算書の当期利益の前に計上したものを加減算するのに、剰余金処分による過年度税効果調整額を加減算していたもの。


☆○損益計算書の法人税等調整額と申告書別表4の加減算額が一致していないもの。



(検討の仕方)

○「当期利益又は当期欠損の額1」欄の金額について、損益計算書の当期利益等と照合して、その正否を確認します。


○「当期利益又は当期欠損の額1、社外流出③」欄の記入の正否について、株主資本等変動計算書と照合します。


○別表4 の「所得税額等及び欠損金の繰戻しによる還付金額等19」欄の金額と前事業年度の別表1(1)「25」欄(所得税額等の還付金顧)及び「27」欄(欠損金の繰戻しによる還付請求税額)の合計額が一致しているかを確認します。


○申告書各表の「益金算入額」、「益金不算入額」、「損金算入額」、「損金不算入額」が正しく移記されているか照合します。


○加算、減算したもののうち、各別表に反映されているか確認します。

(例)

申告書別表3(1) 特定同族会社の留保金額に対する税額
申告書別表6(2) 外国税額控除の国外所得金額
申告書別表6(6)~(26) 法人税額の特別控除額及び取戻税額
申告書別表8(1) 受取配当等の益金不算入額
申告書別表10(5) 収用換地等の所得の特別控除額
申告書別表11(1)(1の2) 貸倒引当金
申告書別表14(2) 寄附金の損金不算入額
申告書別表16(10) 資産に係る控除対象外消費税額等


○「留保②」欄の金額が、別表5(1)1 (利益積立金額の計算に関する明細書)「当期中の増減②、③」欄に移記されているか照合します。


(注)会社法施行日(平18.5.1)前に利益租立金額を旧商法第293条ノ2(利益の資本組入)及び第293条ノ3(準備金の資本組入)の規定により資本に組み入れた場合は、申告書別表5(1)のみに記載することに留意します。


 次回から各論に入ります。



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伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。