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COLUMN

2019.05.14税務情報

タワーマンション節税の落とし穴

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1. はじめに
 「タワーマンション節税」とは、タワーマンションの住戸の「取引価格」(時価)と「相続税法上の評価額」との金額の乖離を利用した節税手法です。
 雑誌記事や書籍等で見かけることも多く、少なからず過熱感のあったタワーマンション節税ですが、平成29年度税制改正においてはタワーマンション節税を抑制することを目的とした税制改正がなされています。また、あまり広くは知られていませんが、平成23年にはタワーマンション節税が否認された事件があり、国税不服審判所において公開されています。
 本稿においてはタワーマンション節税の基本的な仕組みを確認した上で、平成29年度税制改正によるタワーマンション節税に対する影響、および、国税不服審判所の事例を通して注意すべきポイントについて整理をしたいと思います。


2. タワーマンション節税の基本的な仕組み
 タワーマンションの住戸の相続税計算上の評価額は、「区分所有する建物の価額」と「敷地権(土地)の価額」の合計額となります。
 「区分所有する建物の価額」は、固定資産税評価額により評価します。一般的に、固定資産税評価額の金額は、取引価額(時価)の概ね40~50%程度の金額になります。
 「敷地権(土地)の価額」は、路線価等により求めたマンションの土地全体の相続税評価額に各戸の所有者の持分割合を乗じて評価します。一般的に、評価額は、時価の概ね80%程度の金額となります。
 タワーマンションの評価額は建物と土地の評価額の合計となりますが、タワーマンションは狭い敷地に密集して建てられているため、低層マンションと比べて建物の割合が高くなり、それにより相続税評価も低くなります。
 また、国税庁の調査では、タワーマンションの取引価額と相続税評価額の乖離の平均は「3.04倍」とされています。これは、タワーマンションの相続税評価額は取引価額の約1/3程度となることを意味しています。つまり、タワーマンションを購入することにより、約2/3もの資産圧縮効果が望めるケースもあります。


3. 平成29年度税制改正による影響
 加熱するタワーマンション節税に一定の抑制をかけるべく、平成29年度税制改正において、タワーマンションの建物の評価方法の基礎となる固定資産税評価額の計算方法について改正がなされました。
 従来は、タワーマンションの低層階・高層階ともに同じ固定資産税評価額が適用されていました。これに対して、平成29年税制改正後は、一定の高さ以上のタワーマンションの固定資産税評価額については、上層階になればなるほど高額になるように調整がされることとなりました。
 具体的には、住戸が1階上層になる毎に固定資産税額が0.26%上昇するように調整されます。この調整により、例えば、50階建てのタワーマンションの場合、50階の住戸の評価額は、1階の住戸の評価に比べ、約13%程度上昇することとなります。
 前述の通り、タワーマンション節税の資産圧縮効果が平均2/3程度であることに鑑みると、この改正によるタワーマンション節税への抑制効果は限定的であり、節税の効果はいまだ充分に大きいものであると考えます。

※改正後の計算方法が適用されるのは、平成29年4月1日以降に売買契約が締結され、平成30年1月1日以降に引渡しがされたタワーマンションとなります。



4. 国税不服審判所事例(平成23年7月1日裁決)
 次に、タワーマンション節税が否認された事例について確認したいと思います。
 この事例では、相続1ヶ月前にタワーマンションを2億9300万円で購入、相続税申告上は5,800万円で評価、相続4ヶ月後にタワーマンションを2億8500万円で売却したところ、国税不服審判所は「短期間に一時的に財産の所有形態が不動産であったにすぎない財産について、実際の価値とは大きく乖離して過少に財産を評価することとなり、納税者間の実質的な租税負担の平等を害することとなる」として、財産評価基本通達6項を適用し、財産評価基本通達による評価額ではなく時価により相続税計算することが適当とされました。
 このケースは、「相続の直前に購入する」「相続の直後に売却する」等の点により、タワーマンション節税による資産の圧縮が第一義の目的であると判断されたため、時価での課税がされたと考えられます。行き過ぎた節税には課税されるリスクがあるという点については留意が必要です。


5. まとめ
 本稿において、タワーマンション節税の仕組み、平成29年度税制改正の内容、および、国税不服審判所の事例を確認してきました。
 平成29年度税制改正による固定資産評価額の調整は限定的ではありますが、国税当局がタワーマンション節税に対して警戒の目を向けていることがわかります。
 更に、ご紹介した国税不服審判所の事例にもあります通り、節税目的であることが明らかな場合には財産評価基本通達6項の適用による否認リスクが高まるという点に留意することが必要です。



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芦川 洋祐

ひのき共同税務会計事務所/芝オフィス代表 税理士平成13年早稲田大学社会科学部卒。デロイトトーマツ税理士法人、太陽グラントソントン税理士法人を経て現職。国内上場企業及び外資系企業に対する税務申告業務から、連結納税コンサルティング業務、事業再編・M&Aに係る税務精査業務、ストラクチャー検討業務、オーナー企業に対する事業承継支援業務などに従事。著書に「中小・オーナー企業の国際税務」(中央経済社)、「第6版 詳解 連結納税Q&A」(共著・清文社)がある。