前回に引き続き、役員給与の税務処理について、「4 過大役員給与」から間違えやすい事例を紹介します。
1~3は前回の記事をご覧ください。
4 過大役員給与
(間違えやすい事例)
○役員給与の限度額に使用人兼務役員の使用人分の額を含めない旨を定款に定めず又はその旨を株主総会の決議によって定めていないのに、使用人兼務役員の給与から使用人分の給与の額を控除して役員給与の額を計算し、支給限度額と対比しているもの(法34②、令70、基通9-2-22、9-2-23)。
○使用人兼務役員であった者が使用人兼務役員とされない役員(令71①)となった場合において、その直後にその者に対して支給した賞与の額のうち、使用人兼務役員であった期間に係る使用人分賞与の額として相当であると認められる部分の金額については、損金算入が認められるのに、これを否認しているもの(基通9-2-27)。
○使用人兼務役員に対する給与の損金算入の適否について、使用人としての職制上の地位の有無、比準者との比較等による検討を行っていないために、役員給与の損金不算入額が加算もれとなっているもの(法34②、令70、基通9-2-23)。
○使用人の支給時期と異なる時期に使用人兼務役員に支給した賞与を、使用人としての職務に対する賞与の額であるとして損金の額に算入しているのに、そのまま認めているもの。
(注)使用人兼務役員に対する使用人分賞与として相当な額は、他の使用人に対する賞与の支給時期に支給し、損金算入したときに認められます(法34②、令70、基通9-2-26)。
☆○使用人兼務役員の使用人としての職務内容からみて比準使用人として適当な者がいない場合に、単に使用人のうち最上位の者の給与の額を、使用人兼務役員の使用人分の給与の額としているもの。
(注)比準者として適当な者がいないときは、その使用人兼務役員が役員となる直前に受けていた給与の額、その後のベースアップ等の状況、最上位の使用人に支給した給与の額等を参酌して適正に見積もった額によります(法34②、令70、基通9-2-23)。
○役員に対する認定賞与ではなく、貸付金処理を行う場合に、金銭消費貸借契約書、取締役会議事録、貸付金受入伝票等、会社内部の手続きの確認をしないで、これを貸付金として処理しているもの。
○役員の海外渡航費中、法人の業務の遂行上必要と認められない部分の金額は、当該役員の給与(賞与)とすべきであるのに、法人の損金を認めているもの(基通9-7-6、9-7-7、9-7-8、9-7-9、9-7-10)
○役員の分掌変更又は改選による再任等退職の事実がない場合において支給した役員退職金は、損金算入を否認すべきであるのに、これを認めているもの。
(注)常勤役員が非常勤役員(代表権を有する者等は除く。)になったこと、その分掌変更後における報酬の額が激減(おおむね50%以上の減少)したこと等、実質的に退職したと同様の事情にあると認められる場合は除かれます。
なお、退職給与として支給した給与には法人が未払金等に計上した場合は含まれないこととされました(基通9-2-32)。
☆○確定給付企業年金等の掛金等は実際に支出をした日の属する事業年度の損金に算入され、未払部分については、たとえその未払部分に係る期間を経過していても損金に算入することはできません(令135、基通9-3-1)。
○出向元法人が適格退職年金契約を締結している場合、出向先法人があらかじめ定められた負担区分に基づき支出するその出向者に係る掛金等の額は、実際に支出した年度の損金に算入されるのに未払金として計上した法人計算をそのまま認めているもの(基通9-2-51)。
○使用人が役員となった場合において、使用人であった期間に係る退職給与を支給するときは、その支給をした日の属する事業年度の損金の額に算入するとことになっているのに、未払金として計上した法人計算をそのまま認めているもの(基通9-2-36)。
○出向者が出向元法人を退職した場合において、出向先法人がその退職した出向者に対して出向元法人が支給する退職給与の額のうちその出向期間に係る部分の金額を出向元法人に支出したときは、その支出した額は、たとえ当該出向者が出向先法人において引き続き役員又は使用人として勤務するときであっても、その支出をした日の属する事業年度の損金の額に算入するのに、退職していないとして否認しているもの(基通9-2-49)。
1 事前確定届出給与について、一定の要件を満たす特定譲渡制限付株式及びその特定譲渡制限付株式に係る承継譲渡制限付株式による給与は、納税地の所轄税務署長への届出が不要とされました(法34①二)。
2 利益連動給与の算定の基礎となる利益の状況を示す指標が、利益の額、利益の額に有価証券報告書に記載されるべき事項による調整を加えた指標その他の利益に関する指標であることについて、規定の明確化が行われました(法34①二・三イ、令69⑧)。
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税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。