Mizuho Industry Focus vol.216
5G時代のモバイルインフラシェアリング拡大に向けて
~これからのモバイルインフラには協調と競争の使い分けが求められる~
2019年3月28日 発行
〈要約〉
○5G時代は、通信の主体が人だけでなく、モノにまで広がり、4Gまでの高度化以上に大きな変化と経済効果をもたらすとされている。ただし、5Gを地方にまで広く整備しようとするとその投資負担は大きく、さらに足下では通信料金に対する値下げプレッシャーも強まっている。その両方の課題に対応するソリューションとして、モバイルインフラシェアリングが挙げられる。
○海外では既にインフラシェアリングが広く普及している。シェアリングの普及率の高い、米国、欧州、アジアの事例をみてみると、シェアリングが普及する要因として、①カバーエリアの広さ、②コスト削減や債務圧縮ニーズ、③通信キャリアの数の3つが挙げられる。
○一方、日本では、その国土の狭さに加え、これまでは通信キャリアにとって通信品質も差別化要素となっていたため、インフラシェアリングの導入が進まなかった。また、通信キャリアの数も増えず、巨額の設備投資を続けても通信キャリア各社が高い収益性を維持できたことも、シェアリングが普及しなかった要因と言える。しかし、足下では通信品質の差はなくなりつつある。
○このような日本の状況が、5Gによって大きく変わる可能性がある。電波が遠くに届きにくく、多数の基地局が必要になる5Gの特性に加え、政府が地方への早期展開を強く求めており、通信キャリアの投資負担増が懸念されている。更には、革新的なネットワークを武器にした楽天の参入や、通信料金への値下げプレッシャーの高まり、ローカル5Gの検討や、インフラシェアリングに関するガイドラインの明確化等、インフラシェアリングを後押しする環境が揃いつつある。
○通信キャリアの取り組み方としては、通信キャリア同士でシェアリングを担うJVを設立する方法や、タワー部分を分社化した上で一部株式を売却して財務改善を図る方法、独立系事業者を活用する方法等が考えられ、独立系事業者については、電力系事業者等の様々な事業者がその担い手となり得る。今後の取り組み方向性としては、タワー等のパッシブインフラでは協調し、RANやコアといったアクティブインフラでは各社で高度化を競い合う、協調と競争の使い分けが求められる。
○競争軸がインフラからサービスやコンテンツに移る中、通信キャリアはサービス・コンテンツと5Gインフラへの投資を同時に進める大きなチャレンジに直面している。インフラシェアリングを活用して効率的に5G整備を進め、5Gによる経済効果を早期に実現することを期待したい。
※本記事は、みずほ銀行より掲載許可をいただき、同行ホームページで公開されている記事を転載したものです。
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