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COLUMN

2019.04.05産業情報

日本のLNG産業の将来展望に関する考察~LNG輸入開始から50周年を迎えて~

  • Mizuho Industry Focus
  • 経済情報

Mizuho Industry Focus vol.215
日本のLNG産業の将来展望に関する考察~LNG輸入開始から50周年を迎えて~


〈要約〉

○2019年は、1969年に日本がLNGの輸入を開始してから50年目の節目の年にあたる。日本は、世界最大のLNG輸入国であり、ユーティリティ企業、上流開発企業、総合商社を含めた日本企業は、LNGの長期に亘る引き取りや、LNG液化プロジェクトへの参画等を通じて、これまで日本のエネルギーセキュリティ確保と世界のLNG取引の発展に貢献してきた。本稿では、LNGのこれまでの50年間を振り返ると共に、今後のLNG産業の変化を展望し、事業者の戦略方向性について考察する。


○需要面では、今後は、アジアを中心とする新興国でLNG消費量の増加が見込まれる。従来型の陸上式受入基地対比、短期間・少額の投資で設置可能な浮体式受入基地等のソリューションや、船舶燃料等の新たな用途が、今後のLNG需要の拡大を後押しする可能性がある。一方、新興国の需要が拡大する中、日本のプレゼンス維持や国際競争力のあるLNG調達が重要なポイントとなろう。


○供給面では、需要拡大を支えるため、LNG生産プロジェクトへの継続投資が必要である。新規プロジェクトでは販売の安定性確保のため長期契約が不可欠である一方、柔軟性に対する需要側のニーズが高まっており、多様な供給力を背景に販売の柔軟性を拡充している「ポートフォリオプレイヤー」が注目されている。一方、供給ソースの多角化には規模が必要であり、更なるサプライヤーの再編が進む可能性もあろう。


○また、LNGの取引形態が徐々に変化している。従来のLNG取引は、原油価格をLNG価格決定の参照指標とする長期契約が中軸であった。しかし、需要変動への対応等のため調達に関わる柔軟性が従来以上に重要視されるようになってきており、近年ではLNGのスポット取引が徐々に拡大している。今後、需給調整や市況変動への対応のため、LNGトレーディングの役割拡大が期待される。


○変革期を迎えるLNGを、再生可能エネルギーと併用しつつ低炭素化を目指す「Destination fuel」と捉えるか、将来的な脱炭素化に至るまでの「Transition fuel」と位置付けるかは、海外事業者の見解が分かれている。海外事業者は、LNGの事業上の位置付けや地域毎の事業環境を踏まえた戦略を採用している。


○日本のLNG関連事業者にとり、2030年までの中期においては、日本政府が想定するエネルギーミックスを踏まえると、LNGと再生可能エネルギーを並行して強化する戦略が有効であると考えられる。また、現地企業との提携を通じたアジアでの需要開拓や、低炭素化で先行する欧州勢の事業ポートフォリオ入れ替えを捉えたLNG資産取得等が事業機会に繋がる可能性がある。2050年頃を展望した長期においては、政策や技術開発動向を見極めたLNG事業戦略の策定が重要である。


○日本のLNG事業者には、エネルギー・環境政策の枠組みや低炭素技術の開発動向に留意しつつ、LNG産業の変化を踏まえた適時適切な事業戦略構築によって、LNG事業を長期的な成長実現のためのドライバーとしていくことに期待したい。



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みずほ銀行 産業調査部

※本記事は、みずほ銀行より掲載許可をいただき、同行ホームページで公開されている記事を転載したものです。
https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/index.html